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労務コンプライアンスのための就業規則Q&A
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当事務所へよくある質問を労務コンプライアンスの側面からお答えしています。

Q1.土・日勤務のアルバイトを解雇する場合、解雇予告は必要ですか?
Q2.年俸制だから残業代を支払はなくてもよいですか?
Q3.管理職にすれば割増賃金を支払はなくてもよいですか?
Q4.ミスで会社に大損害、社員の責任は?
Q5.社員が転勤命令を拒否したが?
Q6.社員が痴漢で逮捕、解雇できますか?
Q7.自転車で会社通勤、通勤手当は返す?
Q8.パートタイマーや嘱託社員用の就業規則を作成しないと、正社員の就業規則が適用されますか?
Q9.通勤手当を6ヵ月定期券で交付したいのですが問題はありますか?
Q10.2事業場を掛持ちで働くときどちらで割増賃金を支払うのですか?
Q11.始末書の提出を強制することはできますか?
Q12.年休の買い上げが認められるのはどのようなケースですか?
Q13.退職者の前歴を知りたいという問い合わせに答えても良いですか?
Q14.自主的に行われる残業は時間外労働になりますか?
Q15.社命での接待ゴルフ中のけがは、労災保険の適用となるでしょうか?
Q16.試用期間中と本採用後の賃金を区別して設定してもよいのですか?
Q17.パソコンの私用メールを理由に懲戒処分はできますか?
Q18.計画停電による休業の際の賃金の取扱いについて教えて下さい。
Q19.行方不明社員の対処方法を教えて下さい。
Q20.雇用契約書に記載しなければならない事項は何ですか?
Q21.旅行積立金を賃金から控除できますか?
Q22.従業員の健康診断について教えてください。
Q23.最低賃金制度とは何ですか?
Q24.労災事故が起きた場合の使用者等のとるべき措置は何ですか?
Q25.懲戒処分の根拠は定める必要がありますか?
Q26.振替休日と代休の違いは何ですか?
Q27.休職制度について教えてください。
Q28.外国人労働者を雇用する際の注意点を教えてください。
Q29.着替え時間は労働時間ですか?
Q30.パートの雇止めをする際の留意点を教えて下さい。
Q31.パワハラ防止対策について教えて下さい。
Q32.配置転換・転勤等にまつわる留意点を教えて下さい。
Q33.身元保証人の責任範囲について教えてください。
Q34.自転車通勤を認める場合の注意点について教えてください。
Q35.定額残業代について教えてください。
Q36.マイカー通勤者の管理上の注意点について教えてください。
Q37.休日に関する基本ルールを教えてください。
Q38.パートタイマーからの有期労働契約の中途解約は可能ですか?
Q39.海外留学や国内研修に派遣していた社員が、帰国・終了後ただちに退職したいと申し出ました。留学や研修の費用を請求できるでしょうか?
Q40.家族のインフルエンザで社員の自宅待機は有給ですか?
Q41.出張中の移動時間は時間外手当の対象にならないのですか?
Q42.従業員からの突然の退職申し出を拒否できますか?
Q43.採用選考時にメンタルヘルスに関する質問をすることはできますか?
Q44.会社に提出した通勤経路以外で起きたけがは通勤災害となりますか?
Q45.従業員が1分遅刻した場合の取扱いはどうしたらよいでしょうか?
Q46.従業員50人以上になったときに求められる安全管理体制を教えて下さい。
Q47.「休日」と「休暇」の違いを教えて下さい。
Q48.退職後に懲戒事由が発覚した場合の懲戒処分は可能ですか?
Q49.年次有給休暇の取得は繰越分と新規付与分のどちらが優先されますか?
Q50.解雇予告の30日は休日を含めた暦日ですか?
Q51.パートタイマーに対しても、正社員と同様に年次有給休暇を与えなければなりませんか。
Q52.有給休暇取得時の賃金から通勤手当を控除できますか?
Q53.歩合給と残業手当の計算基礎
Q54.雇い入れ時の健康診断で留意する点を教えて下さい。
Q55.労働契約書上の使用者は、社長でなければいけませんか?
Q56.従業員の定期健康診断係に係る費用は、全額負担しないといけませんか?
Q57.半日有給休暇取得後、残業したときの割増手当はどうなりますか?
Q58.配置転換を従業員に拒否されたら、どうすればいいのでしょうか?
Q59.経歴詐称があった社員にどう対応したら良いですか?
Q60.緊急呼び出しに備えた自宅待機の時間は労働時間ですか?
Q61.健康診断の再検査は会社が強制できますか?
Q62.副業を認める場合の注意点を教えて下さい。
Q63.休職期間中の社会保険料は、どうすれば良いのでしょうか?
Q64.有期契約労働者についても試用期間を設けることができますか?
Q65.残業代を水増し請求してくる社員への対処方法を教えてください。
Q66.残業を拒否する社員に強制はできますか?
Q67.緊急呼び出しに備えた自宅待機は給料を支払う義務がありますか?
Q68.社長交代および組織変更に伴う雇用契約書変更の要否について
Q69.半日単位の年次有給休暇について教えて下さい。
Q70.出向と労働者派遣の違いを教えてください。
Q71.出向社員の労働保険・社会保険の負担について教えてください。
Q72.36協定を違反したら、どうなるのですか?
Q73.業者の会合・懇親会に出席した時間は労働時間ですか?


Q1.土・日勤務のアルバイトを解雇する場合、解雇予告は必要ですか?

 労働基準法では、正社員もアルバイトもパートの主婦も区別無く、使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければいけません。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金の解雇予告手当を支払う義務があります。(労基法第20条第1項)ただし、14以内の試みの使用期間中の者は除きます。
 平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除した金額をいいます。週2,3日しか働かないアルバイトやパートの場合、過去3ヵ月間の賃金の合計を暦日数ではなく、実際に働いた日数で割ります。そして、実際に働いた日数で割った金額の6割と暦日数で割った金額に比べ、高いほうが平均賃金となります。
 時給900円で1日4時間週2日働いているアルバイトの平均賃金は、暦日数で計算すると、過去3ヵ月間の賃金(4月1日から6月末分)の合計は93,600円、暦日数(91日)で割ると、1,028円57銭です。実際に働いた日数で計算する方法ですと、「93,600円÷労働日数(26日)×0,6=2,160円」。暦日数で計算する方法よりも高いので平均賃金は2,160円となります。
 このアルバイトを即日解雇しますと、解雇予告手当として支払われる30日分の平均賃金は64,800円となります。
 アルバイトだからといって即日解雇しますと、労基法第20条違反となります。正社員だけではなく、アルバイトやパートの解雇には十分な注意が必要です。

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Q2.年俸制だから残業代を支払わなくてもよいですか?

 年俸制の場合、残業手当が発生するかということですが、時間外労働・休日労働をすれば、当然に発生します。発生しないのは労働基準法第41条に該当する管理監督者などですので、これにあてはまらない社員には、法定労働時間を超える分については残業手当を支払わなければなりません。 残業手当を年俸に加味することは可能です。ただし、それを超えた分の差額は支払うことになります。

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Q3.管理職にすれば割増賃金は支払わなくてもよいですか?

 労働基準法第41条第2号でいう「監督または管理の地位にある者」とは、次の要件を満たす者でなければなりません。
1. 労務管理について経営者と一体的立場にあること 2. 出退勤などの労働時間について、厳格な制限がなく、自由裁量であること 会社の管理職というものは、各々の会社によって該当基準が異なるものであり、一概にいえないものです。一般に中間管理職は時間外の割増賃金がつかないと思われていますが、実際には労働時間などに関する適用除外者としての管理監督者であるかどうかは、名称ではなく実態で判断することとされています。
管理監督者の基準は意外と高いものとされています。管理監督者を増やして人件費を抑えようなどと安易につくられた管理職は、たいてい労働基準法上の管理監督者には該当しないと考えられます。なお、管理監督者であっても、深夜労働の割増賃金は適用除外とはされていないので注意が必要です。

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Q4.ミスで会社に大損害、社員の責任は?

 一般論と言えば、重大な過失で会社に損害を与えた社員は、内規により解雇などの厳しい懲戒処分を受ける可能性が高い。過失と損害との因果関係がはっきりしていれば不法行為(民法709条)により損害賠償責任を負う可能性もあります。
ただ、原因の一端が会社側にもある場合は、信義則により社員の責任は減ります。例えば、会社が過重労働を強いていた結果、工場従業員が居眠りをしたり注意力が散漫になって爆発事故などを起こす場合などです。
1.会社は社員がミスを犯さないように十分な予防をしていたか 2.ミスが起きた場合に被害を最小限に抑えるような措置をとっていたかなどの事情が考慮されます。 業務上の交通事故などで被害者側に過失があれば、裁判者がそれを斟酌して賠償額を減らす。過失による交通事故で社員が支払う賠償金は、飲酒運転などの悪質な場合以外、おおむね賠償総額の二割程度にとどまるケースが多いようです。

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Q5.社員が転勤命令を拒否したが?

 一般に労働契約を結ぶ際には、就業の場所や職務の内容など重要な労働条件が明らかにされることになっています。契約を交わしたあと、すぐにこれらの条件を変更することは契約違反となります。しかし、長期の雇用を見込んで期間の定めのない契約を結んでいる場合は、一定の期間が経過して条件がそろえば、特約のないかぎり、会社は社員の職務内容や勤務地を変更する権限を有すると考えられています。
その条件とは、次のようなことです。
1. 就業規則などに転勤を命じる場合があることを明記している 2. 業務上の必要がある 会社は時代とともに内部の構造や組織も変わり、一部の事業所がなくなることもあります。その一方で雇用を維持する義務があるため、転勤を含む社員の配置に関しては広い裁量権が認められています。

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Q6.社員が痴漢で逮捕、解雇できますか?

 会社に具体的な損害が発生したかどうかが明らかではありませんが、もし会社のイメージや信用を大きく損なう結果が発生したのであれば懲戒解雇も妥当だと考えられます。ただし、信用を大きく損なうケースとしては、マスコミに報道されてしまったり、上場企業がそのことで株価が下落したりと、目にみえる損害が合った場合に限られるでしょう。
そもそも就業規則は、会社の秩序を保つのが目的であり、会社外での出来事にまで及ぶものではありません。たいていの会社では、就業規則において「会社の名誉、信頼を毀損した場合」を懲戒解雇事由として規定していると思いますが、この規定もプライベートまで関与することはできません。原則として会社は、具体的に業務に支障をきたすことがないかぎり、社員の私生活上の行為について懲戒処分を行なうことはできないのです。
しかし、たとえば犯罪など社会的、道義的に問題のある行為をして信用をおとしめた場合、正当な根拠もなく会社を誹謗中傷して業務妨害をするような場合は、プライベートな行為でも会社は懲戒処分を行なうことができるとされています。

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Q7.自転車で会社通勤、通勤手当は返す?

 通勤にかかる費用は労働者が本来負担すべきものです。しかし、社員の福利厚生の一環として住居や通勤経路の届出を求めたうえで、合理的な経路による費用を賃金の一部として支給する会社が多くなっています。通勤手当は賃金なので、通勤に使ったかどうかにかかわらず受け取ることができるとの見方もあります。しかし、「実際にかかる費用を支給する仕組みなので、使っていないならば返還しなくてはならない」との見方が大勢です。
本来、払わなくてもよい通勤手当を払わせれば、会社に経済的損害を与えてはならないという労働契約上の信義則に違反します。自転車通勤なのにあたかも電車やバスを利用しているように装えば、通勤経路の虚偽申告になります。

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Q8.パートタイマーや嘱託社員用の就業規則を作成しないと、正社員の就業規則が適用されますか?

 パートタイマーや嘱託社員用の就業規則を作成していないと、原則として正社員の就業規則が適用されます。あるパートタイマーが退職しましたが、会社からパートタイマーは退職金がないと言われました。労働基準監督署で調査したところ、正社員の就業規則はあるが、パートタイマーについての就業規則がなく、退職金規定にパートタイマーを除く規定がありませんでした。是正勧告の結果、規定どおりの計算でこのパートタイマーに退職金を支払いました。
パートタイマー等を雇用している会社は、正社員とは別の就業規則を作成することが重要です。

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Q9.通勤手当を6ヵ月定期券で交付したいのですが問題はありますか?

 現物給与は、労働協約に規定がないと一切認められないことに注意することが必要です。したがって、労働組合のない企業では現物給付はできませんので定期券での支給はできません。また、労働組合があっても労働協約が締結されていない企業では、現物給付は認められません。 いったん定期券代を通貨で支払い、それを回収して企業が恩恵的に定期券を購入して渡すことは認められます。

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Q10.2事業場を掛持ちで働くときどちらで割増賃金を支払うのですか?

 労働者が異なる事業場、たとえばA事業場とB事業場で働く場合その両者の労働時間を通算し、通算の結果、法定労働時間(8時間)を超える場合には、超えた時間に割増賃金を支払わなければなりません。この場合、割増賃金を支払わなければならないのはABいずれの事業主であるかが問題となります。通常は、その労働者との時間的に後で労働契約を締結した事業主と解されています。なぜならば、後で労働契約を締結した事業主は、雇入れに当たってその労働者が他の事業場で働いていることを承知して、少なくとも確認できる立場であって、労働契約を結んだものであるからです。ただし、A事業場で4時間、B事業場で4時間働いている者の場合、A事業場の使用者が、労働者がB事業場で4時間働くことを知りながら労働時間を延長するときは、労働契約の後先に関係なく、A事業場の事業主が割増賃金を支払わなければなりません。どちらの事業主が法定労働時間外にその労働者を使用した事業主と考えられるか、実質的に判断する必要があります。

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Q11.始末書の提出を強制することはできますか?

 雇用関係においても、個人の意思の自由は最大限尊重されるべきであり、謝罪や反省を強制することはできません。そこで任意に始末書提出に応じない者に対して、業務命令という形での提出の強要や、不提出を理由とした不利益な取り扱いはできないと解されます。ただし、強制するのでなければ、上司が管理権または監督権にもとずき、その監督下にある従業員に対して、指導の観点から始末書の提出を求めること自体は許されるものと解されます。
 始末書の提出を強制できるかについては、多くの裁判例がこれを否定的に解しています。「労働者の義務は労働提供業務に尽き、労働者は何ら使用者から身分的支配を受けるものではなく、個人の意思の自由は最大限に尊重されるべきであることを勘案すると、始末書の提出命令を拒否したことを理由に、これを業務上の指示命令違反として更に新たな懲戒処分をなすことは許されない」としています。(豊橋木工事件 名古屋地裁 昭48.3.14判決) 始末書の提出を強制することは、個人の意思の自由に関わる問題として認められず、提出拒否を理由とした懲戒処分もできないと考えられます。
 とはいえ、従業員に対して一切の書類提出を求めることが許されないわけではありません。従業員は雇用契約における信義則上の義務として、経営上の支障となる行為や、職務秩序を乱すような行為をした場合、具体的内容や事情の調査に応じ、報告する義務があります。よって、顛末や事実経過を報告させる「顛末書」や「経過報告書」であれば、業務命令の一環として提出を命ずることができるため、このような形で記録を残し、改善のための指導を行っていくことが重要となります。

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Q12.年休の買い上げが認められるのはどのようなケースですか?

 ①退職により未消化のまま残った年休、②2年の消滅時効により取得の権利が消滅した年休、③労基法で規定されている年休を上回って与えられている年休に関しては買い上げが認められます。もっとも、このような措置は、あくまでも結果的に年休権が消滅してしまう場合であって、これを制度化することは好ましくありません。
 年次有給休暇は、労基法第39条により労働者への付与が義務化されています。所定労働日の労働を免除するのが年休の趣旨ですから、年休を取得する代わりに賃金を支給することで、年休を与えたことにはなりません。その意味で年休を金銭で買い上げることはできません。
 通達においても、「年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39の違反である」としています(昭30.11.30基収4718)。
 原則として、年休権の買い上げが否定されるのは、労働者が確実に年休権を行使できるようにするためであるから、もはや労働者が当該年休権を行使することができない場合であれば、買い上げも認められます。
 もっとも、このような措置は、あくまでも結果的に年休権が消滅してしまう場合に、使用者が買い上げることも許されると理解すべきものです。仮に、このような扱いをする旨を就業規則等に規定して制度化するとなれば,労働者は年休権の買い上げを期待して年休権の行使を差し控え、かえってその行使を妨げる結果になることも考えられます。したがって、このような制度化は、好ましいものとは言い難いです。

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Q13.退職者の前歴を知りたいという問い合わせに答えても良いですか?

 この問題については、労基法と個人情報保護法と二つの角度から検討する必要があります。労基法上は、照会に答えても法違反に当たりません。しかし、個人情報保護法第23条および厚生労働省が定めた指針で、「雇用管理に関する個人情報を取扱う者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と規定しています。したがって、雇用管理の実務上は、本人の同意なく個人情報を第三者に提供するのは避けるべきです。
 再就職先が前の職場に退職理由などを問い合わせることはよくあります。労基法第22条第4項では、「使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の国籍、信条、社会的身分、組合運動に関する通信をしてはならない」と定めています。しかし、禁止されている通信事項は制限列挙で、「退職の事由」は含まれていません。しかも、禁止事項であっても、「事前の申し合わせに基づかない具体的照会に対して回答することは、禁止するところではない」と解されています。つまり、労基法上は、照会に答えても法違反には当たりません。しかし、個人情報保護法第23条第1項では、「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と規定しています。厚生労働省が定めた指針では、「個人情報取扱事業者以外の事業者であって、雇用管理に関する個人情報を取扱う者に対して、個人情報取扱事業者に準じて情報の適正な取扱の確保に努める」よう要請しています。雇用管理の実務上は、本人の同意なく個人情報を第三者に提供するのは避けるべきです。照会が来たときには、相手先(募集企業)で、本人から同意を得るよう要請するのが適切です。

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Q14.自主的に行われる残業は時間外労働になりますか?

 使用者が労働者に明示の残業命令を行った場合には、労働者が使用者の指揮命令下に労務の提供を行うことは明らかであり、労働時間に当たることはいうまでもありません。それでは黙示の場合はどうなるでしょうか。使用者としては、明確に労働者に時間外労働を命じていないものの、労働者が残業しているのを黙認しているといった事情があれば、労働者に対して黙示の指示をしたものとされ、当該残業が時間外労働に当たる可能性は高くなります。
 残業時間の労働時間制の認定について、近時の裁判は、事実上、労働者側の立証責任を軽減する方向にあり、使用者に明確な指示がなかったとしても、「少なくても黙示の指示があった」として、その労働時間性を肯定する事例が目立つようになっています。例えば、ユニコンエンジニアリング事件(東京地裁 平16.6.25 判決)は、「労働時間とは労働者が使用者の指揮監督のもとにある時間だけではなく、使用者の明示又は黙示の指示による等の業務に従事する時間を含むというべき」としています。また、かんでんエンジニアリング事件(大阪地裁 平16.10.22)は、「所定労働時間内に終了不能な業務を与えていた」ことを認定し、自己申告制での残業申告を本人が行っていなかったとしても、所定労働時間を超えた時間外労働があったことは否定すべきではないと判示して、労働者側の請求を認容しています。
 これらの判例動向を前提とすれば、労働者の時間外労働については、企業側からの明示の指示が認められない場合といえども、「黙示の業務指示」という法理論構成で、その「労働時間性」が認められる可能性が極めて高いといえます。

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Q15.社命での接待ゴルフ中のけがは、労災保険の適用となるでしょうか?

 接待ゴルフ中のけがが労災と認められるためには、それが、「業務上の負傷」と言えなければならず、そのためには、①事故が業務遂行中のもので、かつ、②けがが業務によるものでなければなりません。この接待ゴルフが事業運営上絶対的に必要なものであり、かつ、会社の積極的特命によるものだと立証できれば、労災適用の可能性がないとはいえません。しかし、仕事をするために絶対必要な接待ゴルフがあるとも考えられず、労災の適用はかなり難しいです。
 接待の定番といえばゴルフですが、ゴルフでけがをする人は意外と多いようです。これが会社の業務遂行上必要なものであった場合には労災の適用はあるかどうか。実務的にはよく問われるケースです。
 接待ゴルフは、打ち合わせや情報交換にも使われますが、主な目的は、単に親睦を図ることにあると思われますので、この際のけがは、業務遂行中のものとはいえないということになります。そうでないとすると、単なる接待のためにする宴会の類のものも、広く業務の遂行と解されることになって、その出席途上での死傷も業務上のものであるとして労災保険の請求ができることになってしまいます。判例も取引先企業と主催したゴルフコンペに社長命令で参加した従業員が、その道中で交通事故死したケースでさえも労災とは認定しない例がありました。(高崎労基署事件 高崎地裁 昭50.6.24判決)
 したがって、接待ゴルフに関連するけが等は労災の認定は非常に厳しいと考えられます。せいぜい会社負担のお見舞い金を出す程度になるのが実情です。また、会社として労災に準じて法律を上回る形で補償するのは、もちろん企業の自由です。

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Q16.試用期間中と本採用後の賃金を区別して設定してもよいのですか?

 使用者が賃金制度をどのように設定するかは法令に違反しない限り自由です。また、「試用期間中の者」と「正社員」という差異は労基法第3条(均等待遇)でいうところの「社会的身分」にも該当しないと考えられるため、試用期間中の賃金と本採用後の賃金を区別して設定することは違法ではありません。したがって、試用期間中の者について、本採用後よりも低い賃金を設定することは最低賃金を上回っている限り可能です。
 労基法上は、賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項(労基法第89条第2号)とされていますが、労働者に対する具体的な賃金額については、最低賃金法を上回っている限り、これを規制する法令はありません。また、試用期間中の者は、使用者においてその適性等を観察されているのであり、本採用後の正社員と同様に業務が遂行できる段階には至っていると思われますし、使用者も試用期間中の者に対して、本採用後の正社員と同様の成果等を求めているものではないと考えられます。したがって、試用期間中の者と本採用後の正社員との賃金額を区別して設定すること自体、直ちに違法と評価されるものではないと考えられます。
 また、労基法第3条は「使用者の、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間そのほかの労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。」を定めています。しかし、同条でいう「社会的身分」とは、労働者が自分の意思で逃れることのできない社会的な分類を指すものと解されており、行政解釈も同様です。
 上記のことから考えると、「試用期間中の者」と「正社員」という差異は、「社会的身分」には該当しません。よって、賃金の取扱いを区別していたとしても、労基法第3条に違反するものではないと考えられます。

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Q17.パソコンの私用メールを理由に懲戒処分はできますか?

 パソコンの私的使用を禁止する旨の就業規則の規定が設けられている場合、職務専念義務違反を理由に懲戒処分をすることができます。しかし、ルール上は私用禁止でも、実態として黙認されているような状況下では、業務に支障が生じている、職務専念義務違反がはなはだしいなどの事情がないと、メール私用だけを理由にした懲戒処分は難しいです。
 また、目に余るという状況でも、いきなり懲戒処分ではなく、まず注意・指導をし、それでも改まらない場合に謹慎など軽い処分を検討することになります。
 最近の裁判例では、私用メールについては、就業時間中に世間話や同僚のうわさ話といった業務に直接関係ない話をすることは一般的に行われていることであり、全てを職務専念義務違反に問えるものではないとしました。(北沢産業事件 東京地裁 平19.9.18判決) つまり、私用メールのやり取りが、社会的に許される範囲を超え、職務に支障が出る程度のものであるかが問題となるとしました。
 問題発生の事態に備えて、インターネット等の私的使用禁止の条文を規定して、従業員の注意を喚起することはトラブルの未然防止となります。また、私的私用が頻発した場合に、調査(モニタリング等)を行うことについても、規定しておく必要があります。というのも、会社のパソコンであっても、従業員のプライバシー侵害の問題があり、必要性もなく、行き過ぎた態様でのモニタリングを行うことは問題となるからです。また、突然のモニタリングは、従業員との信頼関係を崩壊させてしまうこともあります。どのような場合にどのような方法で調査を行い、またどのような行為が懲戒処分の対象となるか明確にし、適切な運用を行う必要があります。

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Q18.計画停電による休業の際の賃金の取扱いについて教えて下さい。

 計画停電の実施に伴い、店舗・事業所等を休業した場合、原則として労基法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しません。よって、その間に対し休業手当を支払う必要はありません。
 ただし、停電時間以外の時間を休業した場合は、事業主の判断と解する部分が多く、休業手当の支払いが必要となる場合があります。個々の状況により異なりますが、この度の東北地方太平洋沖地震に関連して、厚生労働省よりこの計画停電による休業の際の賃金の取扱いについて、平成23年3月15日に通達が出されました。この通達によりますと、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業する場合も、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として労基法第26条の「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当しないとされています。

 計画停電で電車ダイヤが乱れ、遅刻・早退・欠勤はどうするのかという問題があります。その時間又は1日の賃金を控除するか、あるいは、年次有給休暇を付与するかは労使の話し合いで決定し、お互いに痛み分けすることが大切です。
自宅に帰れないため、宿泊することになった場合のホテル代は会社が負担するべきか。電車が止まっているためタクシーで会社に来たときの運賃、他の路線で来たときの交通費を会社が負担するべきか。
労働者の使用者に対する労働提供義務は「持参債務」です。
 つまり、労務に提供という債務の履行のための費用は労働者が負担すべきものとされています。従いまして、ご本人の事情によるものはもとより、この度の地震の影響で自宅に帰れなくなりホテルに宿泊した費用、急遽、タクシーを利用した費用、他の路線で出勤した場合の交通費などは、原則として会社は別途の費用負担を負う義務はありません。

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Q19.行方不明社員の対処方法を教えて下さい。

 行方不明社員の懲戒解雇が決定された場合、当該社員に対して解雇の意思表示を行う必要があります。解雇の意思表示はあくまで本人に対して行わなければなりません。この場合の意思表示としては、民法97条の2による「公示送達」の方法がありますが、手続きが面倒です。実務上は、会社として解雇の意思表示をしなくてもいいように、就業規則における退職事由の項目に「社員が行方不明となり、14日以上連絡が取れない場合」を追加しておけば、会社からの解雇の意思表示や本人の意思表示がなくても退職が有効に成立すると考えられます。

 行方不明の社員を自己都合退職として取り扱うことが許されるのかという問題は理論的な問題と実務的な問題とを区別して取り扱うことが必要です。単に出社してこなくなったことをもって、その社員の退職の意思表示があったものとして取り扱うことはできず、理論的には所在不明を持って自己都合退職として取り扱うことは難しいわけですが、実務的な問題としてみれば、自己都合退職扱いにしてもほとんど紛争を生じません。
 なぜなら、社員本人が後で会社に現れて復帰を求めるという事態はまず考えられないからです。仮に、そのような事態が生じた場合には、その社員が退職の意思表示をしていないので、自己都合退職扱いは無効であると主張したとしても、今回は目の前に出現したのですから、その場で懲戒解雇の意思表示をすればよいわけです。
 なお、雇用保険の資格喪失手続においても「自己都合退職」として処理してもらえますし、社会保険についても「健康保険被保険者証添付不能届」を資格喪失届に添付して、被保険者証を回収できない旨を記入しておけば問題ありません。

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Q20.雇用契約書に記載しなければならない事項は何ですか?

 労働基準法第15条で次の事項(絶対的明示事項)は必ず書面で明示しなければなりません。労使トラブルを防ぐためには、雇用契約書の内容で従業員が同意した旨の署名・捺印をもらうことが重要です。
(1)労働契約の期間
(2)就業の場所、従事すべき業務
(3)始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、並びに労働者を2組以上に分かれて就業させる場合の取扱い
(4)賃金の決定、計算および支払方法、賃金の締切りおよび支払の時期並びに昇給に関する事項
(5)退職に関する事項

 雇用の流動化や雇用形態の多様化の流れの中で、労使トラブルを未然に防止するために雇用契約の締結が重要となっています。   法律がどうこういう前に、従業員との間に信頼関係を築くことが大切です。そのためにも、信頼関係を作り上げる最初の出発点となる採用のときに、どういう条件で雇い入れるのか雇用契約書でハッキリさせておきましょう。原則、労働契約締結時に従業員に対して、口頭または書面で明示することになっています。しかし、労働基準法第15条では上記の絶対的明示事項に関しては必ず書面で明示しなければなりません。労働基準法では「書面で明示」となっていますから、会社から一方通行で「労働条件通知書」として従業員に内容を説明して、これを渡せば法律上は十分です。しかし、後になって従業員から「そんなの、もらっていない」と言われても困りますので、労働条件通知書ではなく「雇用契約書」として2部作成し、雇用契約書の内容で従業員が承諾した旨の署名・捺印をもらって、会社と従業員が各1部を保持するようにします。雇用契約書を締結することによって、かなりの部分の労使トラブルを防止できます。
 なぜなら、社員本人が後で会社に現れて復帰を求めるという事態はまず考えられないからです。仮に、そのような事態が生じた場合には、その社員が退職の意思表示をしていないので、自己都合退職扱いは無効であると主張したとしても、今回は目の前に出現したのですから、その場で懲戒解雇の意思表示をすればよいわけです。
 なお、雇用保険の資格喪失手続においても「自己都合退職」として処理してもらえますし、社会保険についても「健康保険被保険者証添付不能届」を資格喪失届に添付して、被保険者証を回収できない旨を記入しておけば問題ありません。

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Q21.旅行積立金を賃金から控除できますか?

 労働基準法第24条の賃金の全額払いの原則により、賃金はその全額を支払わなければなりませんが、①法令に別段の定めがある場合、②労使の書面協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができます。労使の書面協定による賃金の一部控除は、「購買代金、社宅、寮その他の福利厚生施設の費用、社内預金、組合費等その事由が明白なものについてのみ控除を認める」とされています。協定書の様式は任意ですが、協定書には少なくとも、控除の対象となる具体的な項目とその項目別に定める控除を行う賃金支払日を記載することが必要とされ、届け出の必要はありません。

 労働基準法第24条の「全額払いの原則」とは、賃金の一部の支払いを留保することにより、これが労働者の足留め策とならないようにするとともに、直接払いの原則と合わせて賃金の全額を労働者が受領できるよう『控除』を禁止したものです。ただし、「法令で別段の定めがある場合」と「書面による協定がある場合」だけは例外を認めています。「法令で定められた場合」の主なものは、所得税、地方税、社会保険料、それに制裁としての減給などがあります。「書面による協定がある場合」とは、購買代金、社宅、寮その他の福利厚生施設の費用、社内預金、組合費等その事由が明白なものについてのみ控除を認めるとされています。この書面には、①控除の対象となる具体的な項目およびその額(可能な限りで)、②控除対象の各項目別に定める控除を行う賃金支払日を記載するよう行政指導がなされています(平11.3.11基発168号)。この書面による協定は「二四協定書」とも言われ、所轄労働基準監督署に届け出る必要はありません。

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Q22.従業員の健康診断について教えてください。

 労働安全衛生法は、規模・業種に関係なく企業に対し労働者の健康診断を義務づけています。具体的には、雇入れ時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断等があります。雇入れ時の健康診断は、その従業員が医師による健康診断を受けた後3ヵ月を経過しない場合に、健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断の項目に相当する内容については実施する必要はありません。特定業務従事者の健康診断は、有害な業務等に常時従事する労働者に対し、6ヵ月に1回定期に医師による健康診断を実施させる必要があります。対象と鳴るとなる業務は深夜業も含まれており、具体的には6ヵ月を平均して月4回以上の深夜業務に従事した従業員が対象とされています。

 事業主は、定期健康診断および特殊健康診断を実施した際に、その結果を従業員に通知する義務があります。また、従業員の健康診断個人票を5年間保存し、これに基づいて従業員の健康管理や適切な配置転換などの措置を講じなければならないものとされています。また、常時50人以上の従業員を使用する事業場が健康診断を行ったときは、遅滞なく定期健康診断結果報告書を提出する必要があります。会社で行う健康診断については法律で事業者に健康診断の実施の義務を課長課している以上、当然事業者がその費用を負担すべきであるとしています。したがって、事業主は雇入れ時および定期に実施する健康診断の費用を原則として負担することが必要です。また、特殊健康診断の受診時間は労働時間であるが、一般健康診断は労働時間ではないとされています。しかし、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいとされています。

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Q23.最低賃金制度とは何ですか?

 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。常時・臨時・パート・アルバイト・嘱託などの雇用形態や呼称にかかわらず、原則としてすべての労働者と使用者に適用されます。最低賃金の対象となる賃金に算入しないものとして(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)、(2)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、(3)所定労働時間外労働、所定労働日以外の日の労働及び深夜労働に対して支払われる賃金、(4)精皆勤手当、通勤手当および家族手当があります。平成23年10月1日から東京都の最低賃金は837円(時間額)に改正されました。

 最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。地域別と特定(産業別)の両方の最低賃金が同時に適用される労働者には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金に達しない賃金を定める労働契約は無効とされ、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。なお、従業員に支払っている賃金が最低賃金に満たない場合、最低賃金法による罰則は50万円以下の罰金となっています。精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者、試用期間中の労働者(最長6か月を限度)、職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受けている者、所定労働時間が特に短い者、軽易な業務に従事する者、断続的労働に従事する者については、都道府県労働局長の許可を条件に、最低賃金の適用は除外されます。

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Q24.労災事故が起きた場合の使用者等のとるべき措置は何ですか?

 労災は会社が申請するものだと誤解している人がいますが、あくまで、被災者本人、もしくは遺族が申請します。会社は、被災労働者や遺族が労災申請をしようとする時、それに協力する義務があります。労災は、被災労働者が勤めていた事業場を管轄する労働基準監督署に申請します。実際に労災事故が発生した場合、労働者が労働基準監督署に提出する労災保険給付等の請求書において、①負傷または発病の年月日、②災害の原因および発生状況等の証明をし、事業者自らも労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出します。ただし、通勤災害の場合は労働者死傷病報告書の提出は必要ありません。

 労働者が労働災害に負傷した場合等には、労働者等が休業補償給付等の労災保険給付の請求を労働基準監督署長に対して行うことになりますが、その際、事業主は労災保険給付等の請求書において、①負傷または発病の年月日、②災害の原因および発生状況等の証明をしなければなりません。ここでいう事業主とは、労働者の雇主を指すのが原則ですが、建設業については元請人であるとされています。事業者は、労働災害により労働者が死傷した場合には、労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出しなければなりません。休業4日以上の場合には遅滞なく提出し、休業4日未満の場合には3ヵ月ごとに提出しなければなりません。ただし、通勤災害の場合は労働者死傷病報告書の提出は必要ありません。

 故意に労働者死傷病報告書を提出しなかったり、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すると、いわゆる労災かくしとして、処罰を含めた厳正な処分がなされますので注意が必要です。

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Q25.懲戒処分の根拠は定める必要がありますか?

 懲戒(制裁)とは、職場の秩序を保つために、使用者が労働者の服務規律違反などに対して課す罰をいいますが、懲戒を行うためには、労働契約上その根拠が必要とされます。したがって、就業規則等に懲戒事由の記載がなければ、懲戒はできません。労働契約法第15条は「使用者が労働者を懲戒することができる場合」とし、労働基準法第89条も「制裁の種類及び程度」を就業規則に記載することを求めています。

 常時10人以上の労働者を使用する事業場では就業規則の作成が義務づけられていますので、懲戒を定めた場合には、その種類や程度、どのような場に懲戒処分の対象になるかという「懲戒事由」を就業規則に記載しておくことも必要となります。

 懲戒処分の種類については、一般的には、訓戒、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇などがありますが、このうち、「減給」は労働基準法第91条に制限規定があり、1回の事案に対する減給額が平均賃金の半額を超えてはならず、また、複数の事案がある場合にも、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはなりません。
 懲戒事由についても、就業規則に定めておくことが必要です。その事由を一つ一つ具体的に示すことが望ましいのですが、実務的には、対象となるべき行為すべてを具体的に示しておくことは無理なので、処分の対象とするべき典型的な違反行為として、具体的なものをいくつか示したうえで、「前各号に準ずる行為があったとき」などと、包括的に定めておくと良いでしょう。
 懲戒をめぐるトラブルにならないようにするためには、あらかじめ懲戒に関して定めておくことも必要ですが、懲戒を行う場合には、相当だと認められる処分となるように慎重にすすめることも大切となります。

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Q26.振替休日と代休の違いは何ですか?

 休日の振替とは、あらかじめ休日としていた日と他の労働日を振り替えることをいいます。つまり、労働日を休日(振替休日)として休ませて、休日としていた日を労働日として勤務させます。このような措置をとった場合は、休日に労働させたことになりませんので休日割増は不要です。適法に休日振替を行うための要件は次の3点です。①就業規則に休日の振替を行う旨を定めること②あらかじめ振り替える日を特定すること③1週1日あるいは4週4日の休日の要件を満たすこと

 代休とは、休日に勤務させてから、後で代償として他の労働日に休ませることをいいます。事前に休日(振替休日の日)を特定するか、事後に代わりの休日(代休)を与えるかという違いです。代休の場合には、休日労働したことに変わりはないので、休日割増が必要です。

 休日の振替を行い新たに出勤日が増えた週については、40時間を超える8時間分が時間外労働に該当するので、25%の割増賃金の支払いが必要となります。同じ週内で休日の振替を行った場合は1週40時間で変更はないので割増賃金の支払いは不要です。可能であれば同一週内で振り替えることが得策です。
 休日労働させた日と同じ賃金計算期間内に代休を与えた場合は、100%の賃金をカットできますので、割増賃金は35%(又は25%)で処理できます。次に、休日労働させて次の賃金計算期間に代休を与える場合は、休日労働させた月に一旦割増賃金(135%又は125%)を支払って清算し、翌月の賃金から100%分の賃金をカットすることになります。代休は前倒しでも構わないので、できれば同一の賃金計算期間内に取得させるのが賢明です。

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Q27.休職制度について教えてください。

 休職制度とは、従業員を労務に従事させることが不能または、適当でない場合に、一定期間在籍したまま就労義務を免除して、就労させない在籍中の特別な扱いをいいます。休職は法定事項でないため、内容や対象者等は会社が独自に決定できます。休職とは、人事異動と同じように「会社が命じる」ものです。いくら本人が申し出ても、会社が「勤務不可能」と認めなければ、休職はできません。

 休職制度を定める場合には、次の事項を検討しなければなりません。①休職事由、種類、②休職期間、③休職期間中の処遇(賃金、賞与等)、④勤続年数の算定上、休職期間の取扱いをどうするか、⑤復職の手続き、⑥復職できない場合の退職、解雇等の手続き。円滑な労働契約の解消(解雇または自然退職)を行うためのプロセスとしても、休職規定は重要であるといえます。

 休職制度の設計上の留意点ですが、試用期間中の従業員やパートタイマー等の長期雇用を前提としない従業員については、適用除外にさせておくとよいでしょう。休職は法定事項ではないため、内容や対象者等は会社が独自に決定できます。休職期間の長さですが、勤続年数に応じて6ヵ月から2年の間で定めていることが多いようです。休職者の休職期間を定めた場合の当該期間は、実質的な休職状態が始まったときからではなく、正式に休職が発令された日から起算します。
 同じ原因で休職を繰り返すケースが発生しないようにするためには、休職規定をそのように整備しておくべきです。例えば、「復職後6ヵ月以内に同一ないし類似理由により欠勤または不完全な労務提供が認められた場合は、休職とする。ただし、その場合の休職期間は先の休職期間の残存期間とするが、その期間が3ヵ月に満たない場合には3ヵ月とする」と定めます。

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Q28.外国人労働者を雇用する際の注意点を教えてください。

 外国人を雇用する場合、従事させる仕事の内容が在留資格の範囲内であるか、在留期間が過ぎていないかを確認する必要があります。確認に当たっては、外国人登録証明書の提示によって可能となりますが、採用決定前に提示を求めることは、公正採用の観点から適切でないとされています。したがって、採用前の段階では口頭での確認に留めるようにします。
 また、外国人であっても日本国内で就労するかぎり、国籍を問わず、原則として労働関係諸法令及び社会保険諸法令が適用されます。
 外国人労働者の雇い入れ及び離職の際には、外国人労働者の氏名、在留資格、在留期限等の「雇用状況」を事業所の所在地を管轄するハローワークに届け出なければなりません。届出は、雇用保険の被保険者である者、雇用保険被保険者でない者を問わず行うことが義務付けられています。

 「在留資格」で就労が認められている者に限り、日本での就労が可能となります。在留資格は27種類あり、①活動に基づく在留資格、②身分または地位に基づく在留資格に区分されます。①のうち、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在については、原則、就労不能となっていますが、残りの在留資格については当該在留資格に定められた範囲内で就労が可能です。また、②については、就労に制限はありません。
 厚生労働省は、外国人労働者が適切な労働条件及び安全衛生の下で在留資格の範囲以内において能力を有効に発揮しつつ就労ができるための指針(「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」)を策定しています。外国人労働者の雇用管理は、文化や言語の違いなどからトラブルが生じる恐れもあるので、労働条件等の内容をわかりやすい方法で理解させることが重要となります。

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Q29.着替え時間は労働時間ですか?

 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を言います。会社が制服の着衣を義務付け、その着衣を事業所内の所定の更衣所等で行うと決めている場合、制服の着衣と脱衣に要する時間は、使用者の指揮命令下に置かれており、労働基準法上の労働時間に該当すると判断されます。
 この考え方によれば、更衣が労働の準備行為で、使用者から義務付けられている場合は、労働時間として賃金・残業代を請求できるわけです。会社内に到着したというだけでは使用者の指揮命令下にあるとは言えませんが、会社が義務付けた労働の準備行為として更衣に通常必要となる時間は労働時間に含まれます。制服に着替える場所を、会社の更衣室でも自宅でも各従業員の自由にしてあれば、場所的拘束性がないため、着替えの時間は原則として労働時間になりません。

 作業服への着替え等の時間が「労働時間」となると判断した「三菱重工長崎造船所事件」(最高裁平成12.3.9判決)では、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事務所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当する。」と判示し、割増賃金の請求を一部認めました。したがって、駅前の清掃、始業前の朝礼、体操、点呼などが、使用者の指揮監督の下で義務的に行われる場合には、それに要する時間は労働時間としてカウントしなければいけません。終業後についても、業務に必要な行為(機械点検、清掃・整理整頓、引継ぎ等)であれば労働時間となりますが、入浴や着替えなどは、特段の事情がない限りは労働時間とはなりません。

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Q30.パートの雇止めをする際の留意点を教えて下さい。

 雇止めとは、パートとの労働契約を期間満了で終了することです。パートの雇止めにあたっての留意点ですが、解雇ではないので、労働基準法20条で定める解雇予告の手続きは必要ありません。なお、「有期労働契約の締結、更新および雇止めに関する基準」では、①雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者、②有期労働契約を3回以上更新されている者、③1年を超える契約期間の労働契約を締結している者(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く)について更新しないこととする場合には、労働基準法上の解雇予告と同様、契約期間満了日の少なくとも30日前までにその予告をしなければならないこと、労働者が不更新の理由について証明書を請求してきたときは遅滞なくこれを交付しなければならないと定められていますので、これらの基準を留意しておく必要があります。
 本来、期間の定めのある労働契約は、原則として、何度更新したとしても期間の定めのない労働契約に変わるものではではありませんから、労働契約の期間の満了とともに何等の理由も要せず終了させることができるはずです。しかし、期間の定めがある労働契約が反復更新されているようなケースでは、雇用に関する法理の適用ないし類推適用により、雇止めの効力を否定するというのが最高裁の考えです。(東芝柳町工場事件(最判昭49.7.22日民集28巻5号927頁))。つまり、解雇権濫用法理が類推適用され、雇止めが無効と判断されています。

 そこで、解雇に関する法理が類推適用されるのはどのような場合なのかが問題となるのですが、過去の裁判例を踏まえても明確な基準を見いだすことは困難であると言わざるを得ません。ただし、更新の回数が多ければ多いほど解雇に関する法理が類推適用される可能性が高くなるものと考えられますので、雇止めの際には十分に留意する必要があります。

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Q31.パワハラ防止対策について教えて下さい。

 パワハラはいうまでもなく、人が人に対して行うものです。このパワハラを防止するためには何よりも人および組織全体に対し、パワハラが許されない行為であることを周知徹底し、意識醸成を図ることを要します。パワハラ防止対策として次の5点が重要です。
 ①トップのメー-セージ 組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す
 ②就業規則や労使協定でルールを決める
 ③従業員アンケートなどにより実態を把握する
 ④研修を実施して教育する
 ⑤組織の方針や取組について周知・啓発を実施する

 厚生労働省によると、全国の労働局に寄せられた職場のいじめや嫌がらせに関する相談件数は2002年度は約6600件だったが、2010年度は6倍の約3万9400件に急増しています。

 企業がパワハラ防止対策に取り組む際、まず何よりも優先的になされるべきは、パワハラ防止に関してトップおよび経営幹部層が共通認識を持つことです。パワハラの定義・具体例を明らかにした上、明確に当該パワハラは職場からなくすべき点を共通認識し、社内的にもその旨、メッセージを発信することが極めて重要です。その際、あらかじめ「実態を把握する」ため、社内アンケート調査等を実施し、従業員がどのような行為をパワハラと認識しているのか確認し、これをトップメッセージに反映させることも有意義です。
 今後ますます企業にとって、パワハラ問題の防止・対応が重要になってきます。被害者が訴訟を起こせば、安全配慮違反などで使用者責任を問われるリスクもあり、経営上の重要な課題と認識する必要があります。

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Q32.配置転換・転勤等にまつわる留意点を教えて下さい。

 使用者が労働者に対し配置転換を命じた場合、当該命令に承服できない労働者が、配置転換命令は無効であることを主張することがあります。配置転換命令自体が権利の濫用と評価される場合には配置転換命令は無効とされます。それでは、いかなる場合に権利の濫用と評価されるのか、という点について、東亜ペイント事件(最判昭和61.7.14)では次のような場合が指摘されています。①転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合、②業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
 特に、家族の介護を行っている労働者、育児を行っている労働者や転居が困難な病気を患っている場合には相当な配慮が会社に求められます。

 業務上の必要性があるか否かは、次の2点から検討されます。(ⅰ)配転を行う業務上の必要性、(ⅱ)人選の合理性。不当な目的・動機がある場合とは、典型的には労働者を退職させるために行われる場合や、会社に対する批判的な言動を行ってきた人物に対する転勤命令などが挙げられます。
 なお、ここで注意が必要な点としては、不当な目的・動機の有無は、(ⅰ)具体的な配置転換命令の内容、(ⅱ)配置転換命令に至までの経過等のような客観的事情から推認する形で認定されることが圧倒的に多いという点です。
 労働者が被る不利益の程度が通常甘受すべき範囲内か否かという点も、権利濫用に該当するか否かを判断するうえで問題とされています。この点、裁判例の中で不利益として問題とされている事情として(ⅰ)家族の介護を行っている労働者や転居が困難な病気を家族が患っている場合、(ⅱ)転勤に伴い単身赴任を余儀なくされる場合、(ⅲ)通勤に長時間を要する場合配置転換・転勤を命ずる場合には十分に留意する必要があります。

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Q33.身元保証人の責任範囲について教えてください。

 身元保証ニ関スル法律により身元保証人の責任が限定されています。期間については、身元保証の契約期間は5年を超えることはできず、期間を定めないときは3年間に限り有効とされます。また、この契約期間は自動更新することはできません。使用者は、社員に業務上不適任または不誠実な行為がある場合等、身元保証人の責任に影響を及ぼす場合はこれを身元保証人に通知する義務があります。身元保証人がこの通知を受けたときは、将来に向かって身元保証契約を解除することができます。身元保証人の損害賠償責任については、使用者の過失の有無、身元保証を引き受けるに至った経緯等諸般の事情を考慮して裁判所が決定することとされていますが、使用者としては、せいぜい2~3割程度の賠償を求め得るにすぎないと考えておくべきでしょう。
 現実の労務トラブルとして行方不明社員の実務対応があります。社員の失踪・行方不明という問題は、どんなトラブルでも相手があることですが、その相手がいない、連絡がとれない「行方不明」であることにその対応の難しさがあります。対応にあたっては、「会社が勝手にできない」行方不明社員本人の意思に関わる事項が出てくるため、親族や身元保証人との連携は重要なポイントとなってきます。
 この身元保証人は、本来社員の不正行為や過失による損害発生時のリスクヘッジなどを目的としたものですが、トラブルが生じた際の緊急連絡先や身元引受人としての意義が大きいのではないでしょうか。社員に近く、それなりに客観的な立場でトラブルの処理に立ち会ってもらえる身元保証人の理解と協力があれば、大きなトラブルに発展することは少ないと思われます。

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Q34.自転車通勤を認める場合の注意点について教えてください。

 現在、健康や環境に配慮して通勤に自転車を利用する人が増える傾向にありますが、それに伴い自転車が加害者となる交通事故も急増しています。そのため、就業規則等で自転車を利用した通勤を禁じていない会社では、自転車を利用して通勤する社員が自転車を安全で適正に利用することができるよう、研修の実施、情報の提供その他必要な措置を講じることが必要です。また、自転車通勤者に対して自転車損害賠償保険等への加入を義務付けます。社員の通勤における自転車の駐車について、必要な場所を確保するか、社員が当該駐車に必要な場所を確保していることを確認する義務が会社にあります。都道府県において条例等がある場合は、その内容を参考にし、特段条例がない場合は、東京都の条例内容を参考にして自転車通勤に関するルールを決めておくと良いでしょう。

 【規定例】
 (自転車利用許可)
第○条 社員が通勤に自転車利用を予定している場合は、あらかじめ以下の書類を添付のうえ、書面にて会社に申請し、会社の許可を得なければならい。
①自転車損害賠償保険等、自転車利用時の人身、対物事故を担保した保険に加入していることが証明できる書類
②通勤時における駐輪場所が確保できていることを証明する書類
③その他会社が提出を求めた書類
2 会社は、第1項の定めにより申請された内容を確認し、通勤時の自転車利用の可否を本人に通知する。
3 第2項の規定により自転車利用を許可した場合、その期間は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年とする。(左記期間の途中で申請した場合は、許可日からその年度の3月31日まで)なお、自転車利用期間を更新する場合は、期間満了日の1ヵ月前までに書面にて第1項に定めた必要書類を添付のうえ、会社に申請しなければならない。

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Q35.定額残業代について教えてください。

 残業代について、労働時間を把握し法所定の額を支払うのではなく、毎月固定的に定額の残業代を支払う方法です。定額残業代が合法と認められるためには次の要件を満たさなければなりません。①残業代に相当する部分が、他の賃金と明確に区分されている ②何時間分の残業代に相当するのか定められている ③実際の残業時間で計算された残業代が定額残業代を超えた場合には、その差額が支払われている よく「残業代を毎月定額で払うようにすれば、後はどんなに残業してもそれ以上は払わなくていいんですよね。」と聞いてくる企業の方がいますが、実際の残業時間が定額残業代相当分を超えていればその差額分は支払う必要があります。残業が少ない月は定額なので働いていない分も余計に払わなければいけないため、定額残業代は会社にとって本来メリットのある制度とはいえないのです。

 役職手当、営業手当、職務手当等について、「この手当は月30時間分の残業代に相当するものとする」として定額残業代化することが考えられます。この場合、新規にこれらの手当を設けて定額残業代化することには問題ありませんが、現在ある手当を定額残業代化するためには従業員の同意が必要となります。なぜならば、現在支給している給与の中から残業代を捻出する、つまり従業員の認識しているであろう自身の基準内賃金を実質引き下げることを意味するからで、従業員にとって“不利益変更”となるからです。やり方によっては従業員のモチベーションに大きなマイナス作用を及ぼしかねないということになります。
 もし、従業員の同意が得られて現在支払っている役職手当、営業手当、職務手当等について定額残業代化できればメリットは大きいです。

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Q36.マイカー通勤者の管理上の注意点について教えてください。

 会社がマイカー通勤を積極的に推奨又は容認している場合には、「通勤は業務ではないが、業務に従事するための準備行為であるから業務に関連するものということができる」として、交通事故の被害者が加害者本人だけでなく社員を雇用していた会社にも、民法715条の使用者責任を問い、損害賠償を命じた判決も出されています。このことからも、これからは今まで以上にマイカー通勤への対応をしっかり行う必要があります。注意点のポイントは以下の6つです。①マイカー通勤規定を整備し社員に周知する、②許可制にし、許可基準を明確にする、③許可申請時に提出書類の明確化、④任意保険の加入内容も許可要件の一つ、⑤許可取り消し要件の定めをする、⑥事故が発生した場合の対応方法の明確化です。

 (1)マイカー通勤規定を整備し社員に周知規定の中に入れる事項①適用範囲 ②許可基準 ③申請時の提出書類 ④任意保険加入要件⑤許可取消要件 ⑥安全運転誓約書 ⑦事故発生の対応 ⑧安全運転教育
 (2)許可制にし、許可基準を明確にする 会社の通勤の実態に沿った誰もが納得する基準をもうける
 (3)許可申請時に提出書類の明確化 許可申請時には、少なくとも免許証・車検証・任意保険証券・誓約書を添付させることはもとより、マイカー通勤をしなければならない事由・通勤コース記載させる必要があります
 (4)任意保険の加入内容も許可要件の一つ 少なくとも対人賠償・無制限、対物賠償・2千万円、搭乗者障害・1千万円が求められます
 (5)許可取り消し要件の定めをするどのような場合に許可を取り消すかその基準を明確に定める
 (6)事故が発生した場合の対応方法の明確化事故を起こした場合の警察への連絡等はもちろんのこと、社内への緊急時の連絡体制を整えておき、必要に応じ助言指導を受ける

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Q37.休日に関する基本ルールを教えてください。

 労基法では、毎週少なくとも1回(「1回」とは暦日つまり午前0時から午後12時までのことをいいます。)の休日を与えればよいことになっています。したがって、土曜日・日曜日を休日とする週休2日制を採用している会社では、土曜日に出勤させたとしても、その週の日曜日に休みを与えていれば、法律上はかまわないこととなります。年中無休、24時間営業を掲げる店などでは、シフト表を作成する中で「毎週少なくとも1回」の休日を与えることが難しいこともあります。これについて労基法では「4週間を通じ4日以上の休日を与える」ことを条件に「毎週少なくとも1回」の例外を認めています。また、休日については、休憩時間のように一斉に与える必要はありません。

 法定休日を特定するかの問題があります。厚生労働省が出した通達では、特定することが法の趣旨に沿うので、就業規則で具体的に一定の日を法定休日と定める方法を指導するようにされています。 たとえば、法定休日を日曜日と定めた場合、土曜日に休んで日曜日に勤務させたときは、週1回の休日が取れているにもかかわらず、日曜日が法定休日なので休日割増しが発生します。しかし、法定休日を特定していない場合、土曜日に休んで日曜日に勤務させたときでも、土曜日に休んでいるので週1回の休日がクリアでき、時間外割増しは発生しますが休日割増しは発生しません。

 労基法は、週休2日の土日が休みの場合は、法定休日を日曜日とするような特定は要求していないところです。ただ1週間に1休日を与えることを要求しているだけであって、特定することまでは、法は要求していないところです。

 労基法では法定休日の特定までは、要求していない所ですが、通達に従い、法定休日を前もって何曜日と決めなくても、法定と法定外を区別することを就業規則に規定しておくとよいでしょう。

 【規定例】
 ① 毎週の休日のうち、休日労働のない最後の日またはすべての休日を労働した場合の、最後の労働した日を法定休日とする。
 ② 毎週の休日のうち最後の1回の休日を法定休日とする。

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Q38.パートタイマーからの有期労働契約の中途解約は可能ですか?

 労働契約には、契約期間の定めがあるいわゆる有期雇用契約と、期間の定めのない無期雇用契約があります。パートタイマーの方との契約が、期間の定めのない無期雇用契約の場合は、民法627条の規定によって、いつでも解約の申し入れをすることができます。一方、契約期間に定めのある有期の労働契約の場合は、民法628条の規定によって、「やむを得ない事由」がある場合に限られます。しかし、労基法では当分の間、契約期間の初日から1年を経過すれば、労働者のほうからは、「やむを得ない事由」がなくても、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができるとされています。ただし、一定の事業が完了するまでの期間を契約期間とする場合や、契約期間の上限が5年まで認められている場合は、対象となりません。

 民法628条では、「やむを得ない事由があるときは、各当事者は」と,契約当事者双方に適用される条文であることがわかります。すなわち、使用者からだけではなく労働者からも「やむを得ない事由」がない限りは、有期労働契約を中途解約することはできないということになります。
 労働者側からの「やむを得ない事由」にはどのようなものがあるかですが、例えば、「使用者が労働者の生命・身体に危害を及ぼす労働を命じたこと、賃金不払い等の重大な債務不履行、労働者自身が負傷・疾病により就労不能に陥ったこと等」が挙げられます。なお、この例で考えると最初の二つは労働者に過失があるとは考えられませんが、労働者自身の負傷・疾病による就労不能は労働者に過失が認められる可能性があるので、場合によっては損害賠償責任を負わなければならないということが考えられます。そうはいうものの、労働者自身の負傷・疾病により労働者から中途解約の申し出があった場合に、会社がこれを受理することは自由と解されます。

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Q39.海外留学や国内研修に派遣していた社員が、帰国・終了後ただちに退職したいと申し出ました。留学や研修の費用を請求できるでしょうか?

 会社が費用負担した留学や資格取得後の退職は、企業にとっての損失も大きいでしょう。しかし、留学前に「○年間は退職しません」という誓約書をとったとしても、民法627条により期間の定めのない労働者はいつでも解約できるため、その効力はありません。また、負担金額の返済規定は、労基法16条(賠償額の予定禁止)に抵触するおそれがあります。
 判例では、その留学に業務性があれば無効(富士重工事件)とされ、業務性を帯びない自発的なものであれば有効(長谷川コーポレーション事件)という判断です。この場合、研修費用を金銭消費貸借契約として、復職後一定期間の勤務を条件に費用の返還を免除する規定にしておくとその問題を回避できます。
 負担金額の返済規定は、労基法16条(賠償額の予定禁止)に抵触するおそれがあります。下記の規定例のように、一定期間の継続勤務があれば弁済免除するという、留学費用の金銭消費貸借契約とし、費用返還が労働契約の履行・不履行と無関係に定められている場合は、労基法16条に抵触しないと考えられます。なお、一定の期間は、民法626条との均衡から「5年以内」が望ましいでしょう。

 【留学費用の返還規定】
 (留学費用)
 第○○条 会社は、留学する社員に対し、次の各号の費用を貸与するものとし、貸与は必要に応じて随時行う。この貸付金は無金利とする。
 2 留学終了後、会社に復帰して5年以上勤務した場合は、前項により貸与した留学費用の返還を免除する。また、留学した社員が、留学中又は帰任後5年以内に死亡又はその他やむを得ない理由により返還不能となった場合、健康上の費用により留学の辞退がやむを得ないと認められる場合には、貸与費用の全部又は一部の返済を免除することがある。

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Q40.家族のインフルエンザで社員の自宅待機は有給ですか?

 労働安全衛生法第66条と労働安全衛生規則第61条では、「病者の就業禁止」に関する規定がありますが、季節性インフルエンザやノロウィルスはこれに該当しません。社員が発症していないとなれば、家族が発症しているだけでは自宅待機を命じる根拠を見つけることは難しいです。インフルエンザもノロウィルスも“会社の責任”ではありませんが、法令で就労が制限されるわけでもなく、単に感染の疑いのあるという社員を自宅待機とする理由は、感染を予防したい会社側の必要に基づくものといえます。
 社員を自宅待機させる場合、少なくとも『自宅待機期間中』については、労働基準法第26条の規定により平均賃金の60%を休業手当として支払う必要があります。

 自宅待機中の給与について、対応はつぎの3通りに分かれます。(1)待機中も全額支給する、(2)待機中については、ある程度支給する(一部控除)、(3)待機中は支給しない(全額控除) このうち、(1)は問題になりえません。問題となるのは(2)(3)の場合です。
 実際には有給休暇の残日数があれば、自宅待機期間中を有給休暇で処理する方法もありますが、社員が拒んだり、有給休暇の残日数がなかったりした場合の対応は難しいものとなります。労働基準法第26条(休業手当)では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定められています。この場合、「インフルエンザによる自宅待機」が使用者の責めに帰すべき事由かどうかという点がポイントになりますが、この規定は労働者の生活保護が目的とされているため、「使用者の責めに帰すべき事由」への該当については、幅広く認められています。

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Q41.出張中の移動時間は時間外手当の対象にならないのですか?

 出張時の移動時間は、労働時間ではないという説と労働時間であるという説があります。移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、労働者が自由に活動できる状態にあれば、労働時間とはならないと解するのが相当といえます。ただし、出張の目的が物品の運搬自体であるとか、物品の監視等について特別の指示がなされているとか、特別な病人の監視看護に当たるといった場合には、使用者の指揮監督下で労働しているといえますので、労働時間に含まれると考えるべきでしょう。
 出張中の移動時間は、日常出勤に費やす時間と性質的に同じか、類似したものと考えられ、労働時間に算入されず、時間外手当の対象とならないとするのが相当です。
 出張の際の往復の旅行時間が労働時間に該当するかどうかについては、通勤時間と同じ性質のものであって労働時間ではないとする説と、移動は出張に必然的に伴うものであるから、使用者の拘束のもとにある時間とみて、労働時間であるという説、使用者の拘束のもとにあるが、特に具体的な業務に従事することを命じられているわけではないから、労働時間とはいえないとする説などがあります。

 この点、裁判例には、「出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」とするものがあります。(日本工業検査事件・横浜地判川崎支判昭和49年1月26日)
 出張中の移動時間については、その時間中に処理すべき用務について特段の指示がある場合を除き、労働時間とみなされず、したがって、時間外手当の対象とはならないとする説が相当と考えられます。

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Q42.従業員からの突然の退職申し出を拒否できますか?

 労働者の都合による退職については、労働基準法上には明確な定めはありません。しかし、民法627条には、「当事者が雇用の期間の定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。」という規定があります。つまり、2週間後には退職することができるということです。
 会社としましては、仕事の引継ぎや後任の手配など、会社の労務管理に必要な期間を考慮して、退職予告期間を、「1ヵ月前」と就業規則や雇用契約書に明示することが妥当です。ただし、就業規則や雇用契約書に関わらず、労使間で合意があった場合には即日の退職なども可能です。

 民法627条の規定に従えば、自己都合退職の場合に、会社に退職の申し出をして2週間が経過すれば、会社側がこれを拒否したとしても退職が自動的に有効に成立するということになります。ただし、月給制の場合においては、賃金の支払い計算期間の前半に申し出た場合は、その期間が満了するまで、後半に申し出た場合は次の支払い計算期間の満了まではできないということになります。労働基準法では、賃金は毎月1回以上支払わなければならないことになっているので、労働者側からの退職の申し出は、法的には2週間から遅くとも45日くらい経過すると有効に成立することになると考えられます。ところが、会社によっては自己都合退職の場合には、就業規則等で退職願(届)は退職する日の1か月前までに提出しなければならないというように定めてある場合が多く見受けられますが、そのような場合に民法の規定とどのように整合性をはかればよいのでしょうか?結論的には、賃金の支払い計算期間の前半に申し出た場合は民法の規定が優先し(つまりその計算期間の満了をもって退職となる)、後半に申し出た場合は就業規則が優先する(つまり1か月後をもって退職となる)と考えるのが妥当とされています。

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Q43.採用選考時にメンタルヘルスに関する質問をすることはできますか?

 企業は、労働者の採用にあたって「営業の自由」(憲法22条,29条)として、「採用の自由」を有しているとされています。判例によっても、企業には採用の自由が広く認められています。面接時にメンタルヘルス疾患について過去または現在の疾患暦を尋ねることは、場合によっては可能です。ただし、質問する際は、採否の判断材料にすることもあることを告知したうえ、質問に答えることについて本人の同意を得ておく必要があります。
 また、当該本人のメンタルヘルス疾患等の病歴に関する独自調査をすることは、慎重に対応することが大切です。メンタルヘルス疾患等の健康情報は極めてプライベートな問題であり、周辺調査はトラブルの要因になりかねないからです。

 原則として、採用希望者の「心の病気」等の病歴を理由に、採用を拒否することは可能です。また、その前提として、面接等の段階でメンタルヘルス疾患暦の有無を尋ねたり、場合によっては独自に調査をすることも可能です。精神疾患の状態によっては、遅刻、欠勤、長期の休職に至る場合が多くあります。少なくとも、いわゆる正社員として長期の雇用を予定して採用する場合は、精神疾患の有無、通院歴について調査することは可能です。
 メンタルヘルス疾患も、「社会的差別の原因となるおそれのある事項」なので、面接等で質問する際は、理由と目的を明らかにして、本人の同意を得た上で、質問を進める事が必要です。もっとも、精神疾患の通院歴は、人に知られたくない個人情報でもあります。また、例えば、10年以上前の精神疾患の通院歴について聞く必要はなく、最近、例えば1~2年前から現在までの通院歴や精神疾患の状態を聞けば現在労務の提供をすることができるかを判断することは可能です。したがって、精神疾患の有無、通院歴については、1~2年前から現在までの通院歴や精神疾患の状態を調査すれば足ります。

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Q44.会社に提出した通勤経路以外で起きたけがは通勤災害となりますか?

 けがをした経路が会社に提出した通勤経路と異なっていても、その通勤経路が「合理的な経路・方法」であれば、通勤災害と認められる可能性は高いです。
 通勤災害を具体的に判断する上で、特に「合理的な経路及び方法」か否かがポイントとなります。「合理的な経路」とは、会社に届け出た鉄道・バス等の通常利用する経路および通常これに代替することが考えられる経路等が合理的な経路となります。次に、「合理的な方法」とは、鉄道、バス、自動車、自転車を使用する場合や徒歩の場合等、通常用いられる交通方法であれば、平常利用している通勤経路であるか否かにかかわらず、一般に合理的な方法と認められます。

 特段の理由もなく著しく遠回りとなるような経路をとる場合は、合理的な経路とは認められません。例えば、健康維持のため、あえて自宅から遠い駅まで歩いた際にケガをした場合などは合理的な経路とは判断されない可能性があります。
 自動車等の無免許運転や自動車・自転車等を泥酔して運転する場合は、合理的な方法と認められないこととなります。
 会社帰りに買い物をしたり、食事をして帰宅した場合、通勤を「逸脱」「中断」したこととなり、原則として「逸脱」「中断」以降は労災保険でいう通勤には該当しません。例外的に通勤途上で日用品の購入その他日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、「逸脱」「中断」の間を除き、合理的な経路に戻った後は通勤とされています。「日用品の購入その他日常生活上必要な行為」とは、帰宅途中で総菜等を購入する場合、独身者が食堂に食事に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、病院・診療所で治療を受ける場合等が該当します。

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Q45.従業員が1分遅刻した場合の取扱いはどうしたらよいでしょうか?

 1分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、労働基準法第24条に定められている賃金の全額払いの原則に反し違法です。一賃金支払期における1か月間の遅刻の合計については、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる端数処理は認められると考えられます。
 また、遅刻に対して懲戒処分であれば法の範囲内で賃金カットが可能となります。労働基準法第91条の「減給の制裁」の範囲内で行うことは、就業規則に定めておけば可能です。ただし、減給は効果的な制裁ですが、運用は慎重に行わなければなりません。

 1か月における遅刻早退の総時間数に1時間未満の端数がある場合ですが、「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは違反として取り扱われない」という行政通達を援用することができると考えられます。
 遅刻によって労務の提供がなかった時間とは別に、「制裁」として給料の減額を行うこと自体は、就業規則に定めをおくことによって有効な懲戒処分として認められています。
 ただし、給料は従業員の生活基盤を支えるものです。いかに従業員に落ち度があったとしても、無制限に認められていません。この上限につき、労働基準法第91条では次の2つの要件を満たさなければならないと定めています。
 (1)1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと
 (2)1賃金支払期に発生した数次案に対する減給の合計が総額の10分の1を超えないこと

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Q46.従業員50人以上になったときに求められる安全管理体制を教えて下さい。

 労働安全衛生法により、事業者は常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生管理者及び産業医を選任し、衛生委員会を設けなければならないこととされています。
 さらに,常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断の結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出することも義務づけられています。
 なお、定期健康診断は、労働者数が50人未満の事業所も実施しなければならないので注意が必要です。ただし、労働基準監督署への報告は不要です。
 工業的業種や屋外的業種などは、上記のほかに、安全管理者の選任、安全委員会の設置も必要です。

 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、衛生に係わる技術的事項を管理させなければなりません。主な職務は、①労働者の健康障害を防止する措置、②衛生の教育実施、③健康診断実施、健康の保持増進措置、④労働災害の原因調査、再発防止、⑤少なくとも毎週1回作業場等を巡視することがあります。
 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなしうる権限を与えなければなりません。
 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうち、安全管理者を選任し、安全に係わる技術的事項を管理させなければなりません。主な職務は、①危険又は健康障害の防止措置、②教育の実施、③健康診断実施、健康保持増進、④労災事故原因調査、再発防止対策、⑤その他厚生労働省令で定めるものがあります。衛生管理者及び安全管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。選任後は遅滞なく、選任報告書を所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。

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Q47.「休日」と「休暇」の違いを教えて下さい。

 「休日」とは、所定労働義務がない日のことをいいます。これに対して「休暇」とは、所定労働義務があるが、労働者が労働義務の免除を申し出て、労働義務が免除された日のことをいいます。すなわち、休日は所定労働義務がないので、そもそも所定労働時間がありませんが、休暇は所定労働義務があり、ゆえに所定労働時間があるのです。
 所定労働時間の有無は、例えば割増賃金の算定の基礎となる賃金の算定に影響を及ぼします。
 休日が増加した場合には、所定労働時間数が減少することになりますので、通常の労働時間の賃金額は増加することになります。反面、休暇が増加したとしても所定労働時間数に何らの影響もありませんので、通常の労働時間の賃金額には変更はありません。
 この通常の労働時間の賃金額がアップするか否かにおいて、休日と休暇の重要な差異があるといえます。

 例えば、月給30万円、1日の労働時間8時間で年間休日が100日と120日の場合を計算してみます。(30万円すべてが割増賃金の計算の根拠になると設定した場合とする)
 300,000÷{(365-120)÷12(月数)}÷8×1.25≒2297円/時間
 300,000÷{(365-100)÷12(月数)}÷8×1.25≒2122円/時間
 日数によって割増賃金に差が出る「休日」とは違い、「休暇」はその日数を増やしても割増賃金の単価は上がりません。これは、もともと労働義務があるのを一定の手続によって免除しているからです。
 また、年次有給休暇以外の休暇(育児・介護・慶弔 等)の有給、無給は、会社が自由に決めることができます。
 その反面、休暇の日数が増えても、年間所定労働時間は減らすことができないという側面もあります。(休日の増加は年間所定労働時間の減少になります)
 夏休みや年末年始は「休日」でしょうか?「休暇」でしょうか?
 就業規則などの制定や改正の際には、以上のような点、文言に注意してみてはいかがでしょうか。

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Q48.退職後に懲戒事由が発覚した場合の懲戒処分は可能ですか?

 退職後に遡って懲戒処分ができるかという点について、原則として退職し雇用関係が終了している者に対し、懲戒解雇処分の意思表示をしても無効となります。
 ただし退職にあたり、不正行為が詐欺によるものであるとのことで退職が取消となったり(民法96条)、錯誤により退職が無効である(民法95条)とされるような場合には、雇用契約は存在していることとなりますので、懲戒解雇は可能になります。
 すでに支給した退職金も、労働者にとって不当利得(民法703条、704条)に当たりますから、不当利得返還請求権に基づいて返還させることが可能ですが、この請求権は10年間で消滅となります。

 退職金の支給という面からは、就業規則(退職金規程)に「退職後に懲戒解雇理由が判明した場合には支払済の退職金の全部または一部の返還を求めることがある」などの一文があれば、返還を求めることができます。
 この一文がないために、多くの会社が過去の裁判で敗訴し、退職金の返還を求めることができませんでした。
 予防策として、
 1.就業規則で定めることとなっている労基法89条1項3号の2による退職金支払期限を、不正行為などの発見のための調査期間をおいて退職後数カ月位に設定しておく
 2.退職金支払後に懲戒解雇理由が発覚した場合に備えた支払済の退職金の返還規定をおくこと
 3.懲戒解職処分の公表が社内外に対してあり得ることを明記しておくことも考えられます
 4.退職時に退職事由を曖昧にさせないで、明確な文書で書いて貰い、後日の退職者の虚偽申告を立証し易いようにしておくことも必要です

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Q49.年次有給休暇の取得は繰越分と新規付与分のどちらが優先されますか?

 年次有給休暇の繰越分と新規付与分のどちらから取得させるべきかについて労働基準法に定めはありませんが、取得期限が先に到来する繰越分から取得させるのが一般的です。ただし、年次有給休暇についての定めは労働条件の「絶対的記載事項」であり書面で明示する必要がある項目ですので、取得順序を明確にする場合には労働契約や就業規則に規定として定めておく必要があります。
 直近に付与したものから取得させるのであれば、トラブルを未然に防ぐためにも、就業規則に以下のような規定を設けておくことが望ましいといえます
 (年次有給休暇の取得順序)
 第○条 年次有給休暇は本年度に付与した分から取得するものとする。

 就業規則等に特に定めがない場合ですが、これには二つの考え方があります。まず、民法489条2号の考え方に立ち、「当年付与分から取得させるべきである」というものです。繰り越された年次有給休暇も新たに付与されたものも労働者の請求権はどちらも弁済期にあることになりますので、使用者にとって有利な方から弁済する、つまり翌年に繰り越すことができる新規付与分から取得させるという考え方です。
 その一方で、消滅時効が先に到来する「繰越分から取得させる」とする考え方です。使用し得なかった年次有給休暇は次年度に限り繰り越されるとされている以上、「休暇を付与するときに与えられる休暇が前年度のものであるか当該年度のものであるかについては、当事者の合意によるが、労働者の時季指定権行使は繰越分からなされていくと推定すべきである」とされており、こちらのほうが一般的で労働者の納得も得られ、合理的なものと解されます。

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Q50.解雇予告の30日は休日を含めた暦日ですか?

 労働基準法第20条は、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告しない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と規定しています。この30日間は労働日ではなく暦日で計算されますので、その間に、休日または休業日があっても延長されることはありません。
 また、解雇予告がなされた当日は30日に算入されず、その翌日から計算され、期日の末日をもって期間の満了となります。したがって、たとえば9月30日をもって解雇するためには、遅くても8月31日までに「9月30日付けで解雇する」旨本人に予告しなければなりません。

 解雇の予告は、少なくとも30日前と決められており、30日前であればこれより長くても差し支えありません。30日前の予告は、いつ解雇されるのか明確になるように解雇の日を特定して予告しなければなりません。
 予告期間の計算については、労働基準法はなんら規定されていませんから、民法の一般原則によることになります。民法第140条には「期間ヲ定ムルニ日、又ハ年ヲ以テシタルトキハ初日ハ之ヲ算入セス」と規定され、解雇予告がなされた当日は算入されず、その翌日から計算され、期間の末日をもって期間の満了となります。
 また、労働基準法第21条は、「試用期間が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告が必要」と規定しています。つまり、試用期間中の労働者に解雇予告手当が適応されるのは暦日で15日からです。つまり採用から14日までは解雇予告手当は必要ありませんが15日以降は対象者となります。ここでいう「14日」も暦日であり、労働日ではありません。14日を超えた試用期間中の労働者を解雇する場合は、暦日で30日前に予告する必要があります。この30日に満たない日数に解雇する場合に足らざる日数分の解雇予告手当が必要となります。

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Q51.パートタイマーに対しても、正社員と同様に年次有給休暇を与えなければなりませんか。

 パートタイマーに対しても原則として年次有給休暇を与えなければなりませんが、付与すべき日数は、所定労働時間や所定労働日数により正社員と異なることがあります。1週間の所定労働時間が30時間未満であって、かつ、1週間の所定労働日数が4日以下または1年間の所定労働日数(週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合)が216日以下の労働者に付与すべき年次有給休暇の最低日数は、下記の日数でよいとされています。

週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
勤続年数
6か月1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年
6か月
以上
4日169日~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121日~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73日~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48日~72日1日2日2日2日3日3日3日

 上記のとおり、年次有給休暇の日は、一定日数まで、勤続年数に応じて順に増えていきます。この点に関して、パートタイマーが期間の定めのある契約により雇用されており、当該契約が更新されている場合の勤続年数の考え方が問題となることがあります。この場合、契約期間が途切れずに契約が更新されていくときには最初の契約の始期から勤務期間が継続しているとみるべきでしょう。また、たとえ各々の雇用契約期間の終期と始期との間に間隔がある場合でも、当該間隔が短く、実質的には雇用関係が継続しているとみられるような場合には、最初の契約の始期から勤続期間を計算すべきと言えます。

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Q52.有給休暇取得時の賃金から通勤手当を控除できますか?

 退職時に有給休暇をまとめて取得することが見受けられます。その際、休暇中の賃金から通勤手当を控除することができるでしょうか。この問題は、控除することができる、控除することができないと意見が分かれています。通勤手当は、労基法等で支給を義務付けられた賃金ではないので、労使が話合いで支給条件を決めることができます。就業規則等で要件が定められていれば、それに従って支払う義務が生じます。
 結論的には、『根拠規定がなければ不可』です。つまり、就業規則等に通勤手当は実際に出勤した日についてのみ支給する旨の支給基準があらかじめ明確にされていることが必要であることに留意する必要があります。

 労基法第39条第6項では、年次有給休暇中の賃金については、①労働基準法による平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 ③健康保険の標準報酬日額に相当する金額 のうちどれか1つを就業規則等で選択することで決定することができます。いずれの計算方法を取る場合も、通勤手当を控除して支払うことはできません。しかし、通勤手当については、就業規則上出勤日のみに支払うことが明記されていれば、本来実費弁償的な性格のものと考えられることから、年次有給休暇を取得した日についてそれを支給しないこととしても労基法に抵触しないと考えられます。すなわち、年次有給休暇を取得した日について通勤手当が支払われなかったとしても、年次有給休暇を取得したために不利益を被ったとみるべきではないと考えられるからです。

 《規定例》
 第○条(通勤手当)
 1.交通機関を利用して通勤する者に対し、最も合理的な通常の経路および方法による運賃実費を支給する。
 2.1賃金支払期間において、実出勤がなく、全日有給休暇の取得が認められた場合、通勤手当の支給はしない。
 3.1賃金支払期間において、有給休暇の取得が認められたため実出勤日数が少ない場合、定期代と実出勤日数に応じて支払う通勤手当の実費を比較し、いずれか低い方を支給する。

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Q53.歩合給と残業手当の計算基礎

 歩合給制をとっていても労働者である以上労働基準法の適用があり、同法第37条の適用があるわけですから、やはり8時間という労働時間の制限を超えた場合は割増賃金を支払わなければなりません。歩合給について割増賃金を計算するときは、日給制、月給制の場合のように所定労働時間で除すのではなく、歩合給額を実際に働いた全労働時間で除し、これに2割5分の割増率を乗じて計算します。
 歩合給の労働者がある日10時間働いて1万円の歩合給を得たとします。この労働者は1万円の歩合給を得るのに2時間の残業をしているわけです。   そこで、歩合給制の場合の割増賃金の計算方法ですが、10時間働いて1万円の歩合給を得たわけですから、1時間につき1,000円の歩合給を得ていることになります。1,000円の2割5分は250円ですから、1時間当たりの割増分は250円ということになります。この労働者は2時間残業していますから、250円×2=500円を割増賃金として支給すべきことになります。

 日給制や月給制などの場合、その賃金は所定労働時間中の労働に対して支払われており、時間外の労働に対して支払われていませんから、労働者が時間外労働した場合は、1時間当たりの賃金の1,25倍の割増賃金を支払わなければなりませんが、歩合給の場合には、上記の例でいえば10時間働いた労働の成果として1万円支払われており、1,25のうち1,0の部分はすでに支払済みとなっているわけです。
 労働基準法第37条の割増賃金制度は、同法で定める労働時間の制限を超える労働に対して所定の労働時間中の賃金より2割5分多い賃金を支払わせようとするものです。

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Q54.雇い入れ時の健康診断で留意する点を教えて下さい。

 雇い入れ時の健康診断は、入社後の適正配置や健康管理に役立てるために実施するものであって、応募者の採否を決定するために実施するものではありません。健康診断については、応募者の適性と職務遂行能力を判断するうえで、合理的かつ客観的にその必要性が認められる範囲に限定して行うべきものです。特にB型肝炎ウイルスとHIVの血液検査については、就業差別につながるというのが行政の一般的解釈です。雇い入れ時の健康診断において何らかの疾病が発見されたとしても、その疾病が、労務提供に支障を生じるような場合は別として、そうでない限りは、採用内定を取り消すことは客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる事由とは認められないことになると考えられます。

 雇い入れ時の健康診断の実施を義務付けられるのは、常時使用する労働者を採用するときに限られるが、正社員に限るということではありません。パート、嘱託社員等であっても期間を定めずに雇い入れる場合はもとより、期間の定めがある場合でも、定期健康診断の周期(通常の場合は1年、特定業務従事者の場合は6ヵ月)を超えて更新することが予定されているような場合あるいは、1週間の労働時間が同種業務に従事している労働者の4分の3以上ある場合には、雇い入れ時の健康診断を行うべきです。
 健康診断項目は、①既往歴および業務歴の調査、②自覚症状および他覚症状 の有無の検査、③身長、体重、視力および聴力の検査、④胸部エックス線検査、 ⑤血圧の測定、⑥貧血検査、⑦肝機能検査、⑧血中脂質検査、⑨血糖検査、⑩尿検査、⑪心電図検査です。
 雇い入れ時の健康診断の検査項目は、定期健康診断の場合と異なり、医師の判断による省略は認められていません。ただし、当該労働者が採用前3ヵ月間に医師による健康診断を受け、その健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断項目については省略することができます。

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Q55.労働契約書上の使用者は、社長でなければいけませんか?

 労働契約は、「使用者」と「労働者」の間で締結される契約です。労働契約上の「使用者」とは、「労働者」を使用し賃金を支払う者とされています。
 通常、労働契約上の使用者とは「労働者」を雇った者です。使用者というと、社長や代表者などの事業主をイメージしますが、労基法第10条にいう使用者は、事業主のほかに、「事業の経営担当者」、「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」も含まれています。「労働者に関する事項」とは、労働条件の決定や労務管理を行うこと、業務の命令や具体的な指揮監督を行うことなどのすべてが含まれますので、これらについて「事業主のために行為をする者」であれば、すべて使用者に該当することとなります。したがって、工場長や総務部長が労働契約書上の使用者になる場合があります。

 労基法第10条の定義する「使用者」とは、労基法上の規制について責任を負い、同法違反に対して罰則の適用を受ける者のことであり、社長と同義語ではなく、もっと広い概念で考えられています。
 取締役のみならず、人事部長、工場長なども該当しますが、あくまでも概念であり、使用者かどうかは実態で判断されることとなります。労働契約上の「使用者」の定義とは異なります。
 その趣旨は、労基法の規制事項について現実に使用者として行為した者を規制の対象とすること(行為者処罰主義)にあります。
 現実に、労基法違反の行為を行った者(たとえば違法な時間外労働命令を行った工場長)が罰則の対象となりますが、両罰規定により事業主に対しても罰則が適用されます。
 労基法が各条の義務について履行責任者を使用者としていますが、その認定は、部長、課長等の形式にとらわれることなく、実質的に一定の権限を与えられているか否かによりますが、単に上司の命令の伝達者にすぎない場合は使用者と認められません。取締役や部長などの地位の高い人から現場監督や主任など比較的低い人まで、その権限と責任に応じて判断される者であって、いわゆる職位のみで使用者となるかどうかが結論付けられるものではありません。

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Q56.従業員の定期健康診断係に係る費用は、全額負担しないといけませんか?

 労働安全衛生法では、企業は1年以内ごとに一回常時使用する従業員に対し、医師による健康診断を受けさせなければいけないとされています。ここで言う従業員とは、期間の定めのない契約で、労働時間が通常の労働者の3/4以上であれば、時給者も対象となります。通達では、その定期健康診断に係る費用は、法律で義務付けている以上、当然会社が負担すべきであるとされています。ところが会社指定以外の任意で受けた健康診断については、定めが無い為、負担義務はありません。しかし公平性の観点から考えると負担してあげた方が良いでしょう。ゆえに、福利厚生制度の向上、健康管理事務の一元化、経費削減へと繋がる事を考えると、指定医療機関を定める事をお勧めします

 定期健康診断が義務付けられているのは前述の通りですが、その受診時間を労働時間と同等の扱い、つまり支払義務が発生するかどうかについては、難しい問題です。一般健康診断は、「一般的な健康確保を図る目的で、実施義務が課されているものであり、業務遂行との関連で行われるものではない。」一方、特殊健康診断は、「事業の遂行に絡んで当然実施されなければならない性格のもので、所定時間内に行われるのを原則とする」とされています。(S47.9.18基発602号)。つまり、特殊健康診断の実施に要する時間は、指揮命令下に置かれている労働時間と解されるので、時間外に行われた場合は、割増賃金を支払わなければならない。」とされているのに対し、一般健康診断の受診時間は「労働者の健康の確保は、事業の運営に不可欠な条件である為、その受診時間の賃金は支払う事が望ましい」とされており、必ずしも事業者が支払わなければいけないものではありません。トラブル防止のため、事前に労使協議し、有給か、無給かを決めおくべきでしょう。

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Q57.半日有給休暇取得後、残業したときの割増手当はどうなりますか?

 例えば、9時~18時勤務(休憩1時間)の人が半休を取得し、14時に出勤し18時以降22時まで勤務した場合。労働基準法に定められた時間外労働割増賃金の対象は、1日8時間又は1週40時間の法定労働時間を超えて労働させた場合となっており、所定労働時間は超過しているように思いますが、実質の勤務時間は14時~22時の8時間です。
 労働基準法に定められた1日8時間の枠は超えていないことになりますので、時間外手当は必要ありません。
 有給休暇は本来労働者の疲労回復を目的としていますので、半休取得して午後定時以降も働いたのでは有給取得の意味がなくなってしまいます。可能な限り、半休取得した日は、定時を超えて労働しないよう指導されることが良いでしょう。

 会社で定めた労働時間である所定外労働時間に対して、ただちに残業を支払わなければならないということはありません。
 実際に労働した時間が8時間を超えた時点から割増賃金が発生すると考えます。
 有給休暇は出勤したものとみなされますが、勤務時間としてはカウントしないということです。
 月例賃金を考えたときは1日あたりの賃金は有給取得した半休の時間+午後の14時から18時までの分になりますので18時から22時までの時間数分は賃金に含まれていません
 このことから、割増賃金は発生しませんが、時間あたりの賃金は4時間分支払わなければなりません。
 ただし、就業規則等で定めがある場合は別です。
 「始業時刻前または終業時刻後の勤務には割増賃金を支払う」と規程している場合は、これに従うことになります。
 労働基準法を上回る就業規則の規程は、就業規則が優先されます。上記の場合、18時から22時までの4時間分を2割5分増しで支払うことになります。

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Q58.配置転換を従業員に拒否されたら、どうすればいいのでしょうか?

 適法な配置転換を受けた従業員には、配転先で業務を行う義務が生じます。そのため、配転を拒否して、配転先の仕事に従事しないことは、労働者としての労務提供義務を果たしていないことにほかならないですから、懲戒処分の対象となります。しかし、懲戒解雇などの厳重な処分をするにあたっては、大変慎重な取り扱いが必要です。最終的に懲戒解雇をするとしても、手順を踏むことが大切です。
 まず、配転を拒否した従業員との間で、配置転換後の配置先、業務内容、生活の変化、会社のサポート体制について情報提供をし、話合いをすることが重要です。従業員との間で、話し合いや説得を重ねたとしても、依然として配転を拒否する場合や、話し合いそのものを拒否する場合には、次の段階である懲戒解雇処分をすることになります。

 配置転換を命ずる場合、就業規則等で定めている必要があり、権利の濫用に当たるかどうかが問題となります。では、権利の濫用に当たるのは、どのような場合でしょうか?①その配置転換について業務上の必要性が無い場合、②必要性があったとしても他の不当な動機がある場合、③労働者にとって通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等が挙げられます。中でも問題になりやすいのは、どの程度の不利益が「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」と判断されるのかという部分です。疾病、障害等のある複数の家族を支える社員の転勤については、「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」(フットワークエクスプレス事件、大津地決平成9年7月10日)と認定されたように、余程の事情がない限りは権利の濫用には当たらず、その異動命令は有効と判断されるようです。よって有効性のある人事異動命令を最終的に拒否する社員に対しては、重大な業務命令違反として懲戒解雇もやむを得ないことになります。ただし即時懲戒解雇は無効と判断される場合がありますので、処分の前に必ず話し合いの場を設け、検討する時間を社員に与える等、会社側の歩み寄る姿勢が重要となるでしょう。

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Q59.経歴詐称があった社員にどう対応したら良いですか?

 まずは社員に対し、履歴書記載の事実や面接時での応答が事実と違っていたことを説明し、そのこと自体が雇用関係に重大な支障を来すことにつき説明します。社員からは、詐称した理由を聴取します。社員の説明に合理的な理由がない場合、まずは自主退職を促すのが好ましいでしょう。懲戒解雇は社員に大きな不利益をもたらすところ、処分の有効性をめぐって紛争に発展する可能性が大きいからです。条件付で解雇する方法(一定期間内に退職願の提出を勧告し、提出があれば依願退職扱いとし、提出がなければ解雇とする)も一つの方法です。
 自主退職を促したにもかかわらず、社員がこれに応じない場合に、解雇や懲戒解雇を検討します。

 採用後の業務に関連する重要な経歴に関し経歴詐称がなされ、会社が事実を知っていればその者を採用しなかったといえる場合、会社は、当該問題社員を懲戒処分や、場合によっては懲戒解雇に付すことができる場合があります。
 会社が社員の採用にあたって経歴の申告を求めるのは、当該社員の労働力が会社の求める条件に合致しているかどうかを判断し、また採用後の社員の職務の決定、職場への配置及び賃金その他労働条件を決定する資料を得るとともに、企業秩序維持に関する事項を踏まえ、その者の採否を決定する資料を得ることにあります。労働契約では信頼関係が基礎となりますので、会社がこれらの点について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、社員は、真実を告知すべき義務を負っているものといえます。経歴詐称は、この真実告知義務に反し、企業秩序を侵害するものとして、懲戒事由となります。なお、懲戒事由になるためには、経歴詐称が懲戒事由となる旨の就業規則や労働協約等の定めが必要です。経歴詐称を理由とする懲戒解雇が認められるためには、社員が、「重要な経歴」を詐称したことが必要です。「重要な経歴」とは、社員の採用の決定や採用後の労働条件の決定に影響を及ぼすような経歴であり、当該偽られた経歴について、通常の会社が正しい認識を有していたならば雇用契約を締結しなかったであろう経歴を意味します。主に学歴、職歴、犯罪歴、病歴等がこれに該当しますが、当該社員の職種などに応じて具体的に判断されます。

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Q60.緊急呼び出しに備えた自宅待機の時間は労働時間ですか?

 労働基準法の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間。
 裁判事例では仕事をしている時間ではなく、指揮命令に服している時間を言い、例えば、店員さんが顧客を待っている間のいわゆる手待時間は、その間特に実作業を行っていなくとも、一般に労働時間に当たると解されています。
 ビル管理会社の従業員が管理・警備業務の途中に与えられる夜間の仮眠時間も、仮眠場所が制約されることや、仮眠中も突発事態への対応を義務付けられていることを理由に、労働時間に当たるとする判例が多く見られます。
 しかし、法律上の解釈では、労働時間には労働者が単に観念的・抽象的に拘束されている時間までも含まないということになっており、自宅待機を命じたり、会社の携帯電話を携行するよう命じたとしても、呼び出しがない時間については、どのような時間の過ごし方をしていても基本的には自由であり、呼び出しを受けて実際の仕事をしない限り、労働したことにはならないという解釈になります

 自宅待機をしている時間は使用者の直接的拘束が及ばず、原則として自宅待機している時間は労働時間には該当しません。
 自宅待機の性格から考えて、それに対する手当についても法的には制約がありません。法律上からは、使用者は賃金や手当を支払う必要はないということになります。
 ですが、宿日直の許可基準たる1人1日平均の賃金の3分の1程度(昭22.9.13 発基第17号、昭63.3.14 基発第150号・婦発第47号)というのが参考になると思います。
 自宅待機の時間は自由だとしていても、実際には「行動の制限」「行為の制限」があり、これを強制的にさせたい場合は強い拘束力として労働時間ととられる場合があります。そのため多くの場合「自宅待機手当」という形で1回の待機につき、対応頻度や重要性を考慮して手当をつけているようです。
 緊急対応がなくても支払われる類の手当ですが、これらを就業規則に盛り込むことである程度の拘束力を持たせることが出来ると考えます。
 自宅待機に対し労働者を事業場で待機させた場合は、使用者の支配領域である事業場という場所的な拘束がある上、待機時間中も対応等に備えておかなければならないので、使用者の現実的な拘束の下にあると評価され労働時間に含まれると考えられます。

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Q61.健康診断の再検査は会社が強制できますか?

 労働安全衛生法において、1年に1回(深夜業務従事者は6ケ月に1回)の定期健康診断の実施を使用者に義務付けています。健康診断の実施後、使用者は労働者に対し、検診結果を通知することも義務付けられています。ただし、法令で義務付けられているのはここまでです。要再検査の診断があったとしても、厚生労働省の指針において、「再検査を要する労働者に対し受診を勧奨することが適当である」とされているまでで、再検査を受けさせることは義務ではありませんし、再検査の費用負担についても定められていません。しかしながら、使用者には、労働者の心身の健康を管理し、配慮しなければいけない安全配慮義務があります。この点から考えると、使用者は再検査を業務命令で受診させるべきであり、業務命令である以上、費用も使用者が負担すべきです。

 まず会社として再検査の受診を命令として課すためには、就業規則にその旨の規定があったほうがよいです。しかし、懲戒処分とできるか否かは慎重に判断する必要があり、裁判例の中に、使用者の再検査の受診命令について、労働者には自己の信任する医師を選択する自由、およびあらかじめ医師の医療行為につき説明を受けたうえで、これを受診する否かを選択する自由があることを根拠に、その命令を無効とし、その命令違反にもとずく懲戒処分を無効としたもの(電電公社帯広局事件・札幌高判昭和58年8月25日)があります。ただし、この事件は最高裁(電電公社帯広局事件・最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決)にも進んでおり、ここでは懲戒処分を有効と判断しています。悩ましい問題ですが、再検査は法律で受診を義務づけていないため、懲戒処分することは行き過ぎかもしれません。

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Q62.副業を認める場合の注意点を教えて下さい。

 日本では、就業規則、雇用契約などで副業を一律に禁止する企業が多く、社員に対して社内の仕事だけを忠実に行うよう、職務専念義務を厳しく考える傾向が強いと言えます。ですが、少子高齢化による労働力人口の減少、長時間労働に対する規制、労働時間の柔軟化、多様な従業員の活用といった最近の風潮からすれば、一律の禁止は改めて検討するべき事柄です。
 副業は自由であるというのが法律上の原則ですが、雇用契約を締結している以上一定の制約は許され、ある一定の程度を超える副業は法律上も禁止することが可能です。
 労働時間の通算、労災への対応とともに、自社の業務と競合するような会社での副業は禁止するや疲労やストレスを溜めさせないということも注意が必要です。

 副業の実態を把握し、適切に管理するためにも、副業に関する就業規則をしっかりと定め、ルールを明確化することが大切です。
 副業を認める場合の選択肢は、・許可制にする ・届出制にする ・完全解禁するが考えられますが、完全解禁は好ましくない副業の可能性もあるため、会社秩序を守るという観点からは、一定の歯止めを設けるという視点が必要かと思います。
 副業を認めるとはいっても、正式な手続きをとらず、隠れて副業をすることは懲戒処分の対象となります。
 副業先への移動の際に生じた通勤災害については、労働者災害補償保険法上の保護が図られることになっていますが、36協定による時間外勤務・休日出勤命令との調和、現行法ではまだ規制のかかる労働時間通算の問題、社会保険・労働保険上の休業給付等の算定の問題など、留意すべき事項も多々あります。
 副業を認めるということは一つの会社の仕事だけでなく社外の仕事を経験することにより、会社の枠を超えた技術、ノウハウ、人脈を培うことができ、人材の多様性を成長させることが可能となり、ボランティアやNPOといった活動に貢献したりすることによって企業自体の社会貢献にも繋がると思います。

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Q63.休職期間中の社会保険料は、どうすれば良いのでしょうか?

 休職のため無給であっても、社会保険料(健康保険・厚生年金保険・介護保険)は掛かります。なお、雇用保険は各月の賃金に応じて保険料が掛かりますので、無給の場合は雇用保険の保険料は掛かりません。休職する場合は、休職期間中も社会保険料が掛かることを本人に説明して、保険料をどのようにして支払ってもらうか確認する必要があります。方法としては、次のようなものがあります。
 1.毎月振り込んでもらう

 2.会社が立て替えておいて、復職後にまとめて返済してもらう

 3.会社が社会保険料の本人負担分を賃金として支給し、その分を控除する

 4.前もってまとまった金額を預かる

 2.の「復職後にまとめて返済してもらう方法」は、長期休職の場合は保険料の総額が大きくなって返済が大変になり、復職しないで退職する場合に、返済に応じないでトラブルになることがよくあります。また、3.の「本人負担分を賃金として支給する方法」では、賃金が支払われていますので、その分だけ傷病手当金が減額されます。健康保険に加入している場合は、私傷病休職の期間(最長1年6ケ月)は傷病手当金(標準報酬月額の3分の2)が従業員に支給されます。しかし、賃金の支給がある場合は、その分だけ傷病手当金が減額されます。従業員にとっては受け取れる金額は同じですが、本来健康保険から支給されるはずの部分(減額分)を会社が支払っていることになります。健康保険の制度を有効に活用するのであれば、無給としたほうが良いでしょう。次に、4.の「前もってまとまった金額を預かる方法」は、個人の事情によっては難しいケースがありますし、想定している休職期間を超えることが考えられます。したがって、1.の「毎月振り込んでもらう方法」が一番無難です。無給の場合は、本人負担分の社会保険料を毎月会社に振り込んでもらうことを、就業規則(賃金規程)に記載しておくと良いでしょう。取扱いを明確にして、休職する従業員に理解してもらえるようにしておくことが必要です。

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Q64.有期契約労働者についても試用期間を設けることができますか?

 民法628条は、「やむを得ない事由」があるときに契約期間中の解除を認めていますが、労働契約法17条1項は、使用者は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、使用者は契約期間満了までの間に労働者を解雇できない旨規定されています。このため、例えば、契約期間1年の有期労働契約者について、3か月の試用期間を設けた場合、試用期間中であっても「やむを得ない事由」がなければ本採用拒否(解雇)できないものと考えられます。3か月の試用期間を設けることにより、「やむを得ない事由」の解釈がやや緩やかになる可能性はないわけではありませんが、大幅に緩やかに解釈してもらうことは期待できないものと思われます。したがって、有期契約労働者についても試用期間を設けることはできるものの、その法的効果は極めて限定されると考えるべきことになります。

 労働契約法17条1項は強制法規ですから、有期労働契約の当事者が民法628条の「やむを得ない事由」がない場合であっても契約期間満了までの間に労働者を解雇できる旨合意したり、就業規則に規定して周知させたとしても、同条項に違反するため無効となり、使用者は民法628条の「やむを得ない事由」がなければ契約期間中に解雇することはできません。では、どうすればいいのかという話になりますが、有期契約労働者には試用期間を設けず、例えば、最初の契約期間を3か月に設定するなどして対処すれば足ります。
 このようなシンプルな対応ができるにもかかわらず、有期契約労働者にまで試用期間を設けるのは、あまりセンスのいいやり方とは言えないのではないでしょうか。正社員とは明確に区別された雇用管理を行うという観点からも、有期契約労働者にまで試用期間を設けることはお薦めしません。

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Q65.残業代を水増し請求してくる社員への対処方法を教えてください。

 実態の無い残業代を架空請求したり、水増し請求しているということは、不法領得にあたるため横領罪になります。自分の立場が経理部長であるなど、お金の管理を業務として任されている立場の人間が同じことをすれば、業務上横領罪になります。また、架空請求をしている人がいたとして、それを架空請求であると知りながら、そのまま給与支払い処理をした経理担当者は背任罪になるかもしれません。残業時間の水増し請求は横領と言えるので、不当利得の返還を求めるとともに告訴して刑事罰を加えることもできます。ただし、その前に当然不正水増しを立証しなければなりません。告訴する以前に不正をさせない管理体制を構築すべきだと考えます。上司は部下の管理指導を行うとともに、規律違反等について相応の人事権(降格等)の行使や適切な懲戒処分(減給や解雇等)を為すべきでしょう。勿論、管理能力の無い上司も厳しく責任を問わなければいけません。

 残業は基本的には「業務命令」で行うものです。管理職の職務命令によって行うもので、残業の賃金支払い請求に対して、管理職が承認すれば支払われます。「自己申告制」を採っていたりすると労働時間管理が甘くなったりします。自己申告制によるあいまいな労働時間管理を放置すべきではなく、日頃から労働時間を厳格に管理して正しく把握する必要があります。運用が不明確で労働者任せのあいまいな労働時間管理は、結果として必要以上の長時間労働招きやすく、また水増し請求を発生させてしまう可能性があります。使用者は自己申告制により労働時間の管理を行う場合には、申告された労働時間と実際の労働時間との間に相違が生じていないかどう定期的に検証し、常に正しい労働時間を把握することができるように、自己申告制による労働時間管理に関する厳格な運用ルールと、正しい労働時間を把握するためのチェック機能を労使間で定めることが必要不可欠です。

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Q66.残業を拒否する社員に強制はできますか?

 現在の法律では、労働基準法第32条にもある通り、法定労働時間を超えて労働させてはならないのが原則ですが、同法第36条に定める労使協定(36協定)を締結・届出ることにより、その範囲内であれば可能とされています。しかしそれだけでは社員に時間外労働を命ずる強制力は発生しません。大事なのは、別途就業規則に定めておくことです。その規定内容に合理性があり、それに基づいて使用者が残業命令を出した場合は、正当な理由がない限り、社員は従わなければなりません。(日立製作所武蔵工場事件、最一小判平成3年11月28日)。しかし逆に言うと「正当な理由」があれば拒否する事もできるので、使用者は、社員の諸事情を具体的に聴き取り、残業の必要性等を比較検討し、総合的に判断することが求められます。

 「正当な理由」がなく、残業命令を拒否する社員にはどう対応したらよいのでしょう。方法としては2つあります。一つは、法律上罰則は定められておりませんが、複数回にわたる注意指導にも応じず、まったく改善が見られない場合は、就業規則の懲戒の定めに従い、軽い処分から検討し、徐々に重い懲戒処分へと繋げていくことも可能です。また、賞与や昇給の査定で評価するのも一つの方法です。必要な残業の拒否は、個人の就業意欲、勤務態度の一要素として十分評価対象となります。しかし「正当な理由」がある場合、懲戒処分はもちろんのこと、賞与や昇給の査定に影響させることは権利の濫用と判断され無効となるので注意が必要です。

 では、「正当な理由」とはどのような理由なのでしょう。難しい判断ですが、余人を以て代えがたく、誰が見てもやむを得ないと判断される事由のことです。つまり具体的には、社員の健康管理上必要な場合(体調不良の場合、通院が必要な場合等)や育児、介護等で他の家族が代わることができない場合等を言います。やはり残業を拒否するにはそれなりの理由があるので、その事情を会社側は把握し、残業の必要性も社員へ説明し、相互で折り合いを付けることをお勧めします。

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Q67.緊急呼び出しに備えた自宅待機は給料を支払う義務がありますか?

 労働基準法の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間のことをいいます。待機中は連絡がつく場所にいなければならなかったり、呼び出し用の携帯電話を持つことを命じられたとしても、実際に呼び出されない限り、使用者からの指揮命令が直接及んだとは評価されません。
 したがって、自宅待機の場合は労働時間にはあたらず、給料の支払い義務もありません。実際に呼び出されて業務に従事した場合のみ、給料を支払えばよいことになります。
 例えば、裁判例上も、ガス漏配管工事のため寮で待機する時間について、高度に労働から解放されていたとみるのが相当であり、労働時間に当たらないとされています(大道工業事件東京地判平成20年3月27日)。自宅待機の性格から考えて、それに対する手当についても法的には制約がありません。法律上からは、使用者は賃金や手当を支払う必要はないということになります。ですが、宿日直の許可基準たる1人1日平均の賃金の3分の1程度(昭22.9.13 発基第17号、昭63.3.14 基発第150号・婦発第47号)というのが参考になると思います。

 従業員を事業所内で待機させ、顧客対応などの必要性が生じた時点で直ちに業務に就くように命じる場合には、その待機時間は、場所的な拘束があり、常に業務に備えた状態でなければならないことから、使用者の直接の指揮命令が及んでいると評価され、労働時間にあたり、給料の支払い義務が発生します。例えば、裁判例状も、24時間勤務でビルの警備・設備運転保全業務を行う会社における従業員の仮眠室での8時間の仮眠時間について警報が鳴った場合は設備の補修等の作業を要することから、使用者の指揮命令下にある労働時間に当たるとされています。(大星ビル管理事件最高裁一小平成14年2月28日)なお、自宅待機を行う場合には、あらかじめ労働協約や就業規則等に詳細を規定し、一定額の待機手当等を支給することが望ましいとおもわれます。

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Q68.社長交代および組織変更に伴う雇用契約書変更の要否について

 労働法では、労働契約は、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約」とされています。この「使用者」は、通常、会社という法人です。社長(通常、代表取締役の場合が多い)は、会社経営を委託されているにすぎず、法に言う使用者ではありません。社長が交代しても、使用者は、依然、会社です。その点から考えれば、社長交代の都度、雇用契約を再締結する必要はありません。事業部名の変更や勤務場所の変更も、組織改編や人事異動の社内の問題で、雇用契約自体には、影響を受けるものではありません。雇用契約書締結の法律上の当事者は会社そのものということです。

 雇用契約書の契約者について、3/11で社長が退任し4/1から新しい社長が就任する場合、4/1からの雇用契約書の契約者は誰にすれば良いでしょうか。毎年、4/1~3/31の期間で雇用契約を更新している場合、3/31で社長が退任し、4/1より新社長が就任するわけですが、4/1からの雇用契約書は誰の名前で契約すれば良いのでしょうか。
 始期は4/1であっても、契約を交わすのが3/27であれば、契約を交わすときの代表者が決済します。契約は会社とするのであって、代表取締役は会社が委任しているだけであり、4/1からは新しい代表取締役がその会社の代表になっているというだけのことです。
 始期が4/1なのに、労働日に突入してしまっている4/1に契約を交わすことはありえません。始期を4/1として3月中に契約しているからこそ、4/1の午前0時から労働日が始まります。いくら前代表取締役が決済したことであっても新代表取締役は責任があります。ただし、前代表の契約によって損害が発生したときに、前代表に過失があれば前代表に対して損害賠償請求できるかもしれません。新代表が会社から委任もされていない3月中は決済する権限はありません。

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Q69.半日単位の年次有給休暇について教えて下さい。

 労働基準法39条に規定する年次有給休暇は1労働日を単位とするものですから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はないとされていますが、必ずしも半日単位の付与に応じられないということではありません。原則1労働日が基準ですが、労働者から申し出があれば半日単位の年次有給休暇の付与も認められます。

 半日単位での付与の留意点としては次の3点です。
 ① 労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であること。
 ② 本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される場合であること。
 ③ 労働者が1日単位で年次有給休暇の時季を指定しているにもかかわらず、使用者が半日単位で年次有給休暇を付与することはできないこと。

 半日単位の付与には、次のような方法が考えられます。
 ① 午前と午後
 ② 所定労働時間を2で割る
 ①の午前と午後で分けることが一般的ではありますが、時間的な不都合をなくすため②のように所定労働時間をきっちり半分に分ける方法もとれます。半日単位の年休付与を行う場合には、前半と後半の時間帯その他の取扱いについて、就業規則に定めて運用することが必要となります。その規定例は次の通りです。

 第○○条 前条の年次有給休暇は、本人の申請により半日単位で取得することを認めるものとする。
 2.前項でいう半日単位の「半日」とは、次の通りとする。
  (1)前半:午前8時~正午 (2)後半:午後1時~午後5時
 3.半日単位で付与する年次有給休暇は、年間5日相当分(10回)を限度とする

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Q70.出向と労働者派遣の違いを教えてください。

 出向と派遣は、出向元・派遣元との間に雇用契約関係を維持したまま、第三者の指揮命令を受けて労務を提供するという点では類似の関係にあるといえます。では、出向と派遣はどこが違うのでしょうか。出向の場合は、労働契約上の権利・義務を出向元と出向先で分担して持っていると考えられています。もちろん基本となる雇用契約は出向元との間にありますが、出向契約(出向先と出向元との契約)を通じて、使用者としての権利・義務の一部が出向先に移ると考えるわけです。これに対して派遣は、使用者としての権利・義務は派遣元に残り、派遣契約(派遣先と派遣元との契約)を通じて、指揮命令権だけが派遣先に移ると理解されています。つまり、派遣労働者を使用する権利を、派遣元が派遣先に貸し出すというイメージです。

 出向の場合は、労働者に対する使用者としての権限や責任を、出向元と出向先の双方で持ちます。たとえば出向労働者に対して懲戒処分を行う場合、出向元と出向先は、それぞれの権限の範囲において懲戒を行うことができます。これに対して派遣の場合は、懲戒処分を行えるのは派遣元だけに限られます。派遣労働者が派遣先に損害を与えた場合は、派遣先は派遣元に対して損害賠償請求を行うことになります。出向の場合で、雇用契約が出向先へ移ったとすると、労働時間の変更や給与の支払いは出向先で行うこととなります。しかし派遣の場合は、雇用契約は派遣先へは移らず、あくまで業務に関する指揮命令権だけが移るので、業務の都合により労働時間を変更する必要が生じた場合でも、それを命令できるのは、雇用契約の相手方である派遣元となります。また、派遣の場合は、派遣先から給与が支払われることは無いことになります。

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Q71.出向社員の労働保険・社会保険の負担について教えてください。

 出向には、在籍出向(以下、「出向」という。)と移籍出向(以下、「転籍」という。)がありますが、転籍の場合は、出向元との雇用関係をいったん終了し、出向先と新たな雇用関係を結ぶことになりますので、転籍の場合の労働保険・社会保険は、すべて出向先での適用となり、転籍先の社員と同じ扱いとなります。しかし、出向の場合には、出向社員は出向元、出向先の両方と雇用関係を持つことになりますので、労働保険・社会保険によって扱いが異なります。まず、労災保険の場合は、労働者が労務を提供しているほうで適用されます。つまり、出向先が負担することになります。雇用保険、健康保険、厚生年金保険につきましては、賃金支払者が負担します。

 労災保険は、出向者の場合、通常出向先の業務を処理しているため、当然に出向先企業の労災保険の適用を受けます。出向元から給与が支払われている場合は、出向元から支払われている給与を出向先から支払われている給与とみなし、出向先から支払われている給与と合算して保険料を算定することになります。雇用保険は、その者が生計を維持するに必要な主たる給与を受けている雇用関係についてのみ成立することになるため、どちらか給与支払額の多い方に保険関係が成立することになります。出向先で給与を負担する場合は、出向元での資格をいったん喪失し、出向先会社での資格を取得することとなります。給与を折半する場合は、どちらかを選択することになります。健康保険・厚生年金保険は、出向先が全額給与を支払っている場合は、出向先の社会保険に加入することになります。同様に出向元が全額給与を支払っている場合は、出向元の社会保険に加入することになります。両方から給与が支給されている場合、どちらか一方で保険関係が成立し、標準報酬月額を算定する場合は、出向元、出向先の給与を合算して計算します。

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Q72.36協定を違反したら、どうなるのですか?

 急激な仕事量の増加や人手不足等によって、届出している36協定の時間を超過した場合には、36協定の時間超過違反としまして、労働基準法第119条の「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が適用されます。
 対象者は、超過した本人ではなく使用者ですが、残業可否に関する権限を持っている上司等も法律上は使用者とみなされますので、併せて罰則の適用がなされます。しかしながら、一度の突発的な違反行為で直ちに罰則が適用されるケースは殆どありません。通常ですと、まずは労働基準監督署から是正勧告が出され改善へ向けての措置を求められことになりますので、今後このような事態が発生しないよう早急に人員の配置や業務の分担・プロセスの見直しを図っていくことが重要です。

 36協定(特別条項付きの場合を含む)で定めた延長時間限度を超過して働かせた場合は、労働基準法第32条(労働時間)、又は、第35条(休日)の定めに対する違反となり、「6か月以下の懲役、又は30万円以下の罰金」の処罰対象となります(同法第119条)。処罰対象は、「労働基準法上の使用者」ですが、使用者とは、「事業主、又は、事業の経営担当者、その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」と定義(同法第10条)されていますので、当然、ライン上の上司ということになります。なお、労働者本人には罰則は適用されません。
 実際に罰則が適用されるか否かは労働基準監督署の判断に委ねられています。現実には一度の違反で即罰則の適用まではいかず是正勧告に留まるのが通常といえますが、内容が重大かつ悪質である等個別事情によっては当然適用される可能性はあります。

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Q73.業者の会合・懇親会に出席した時間は労働時間ですか?

 具体的な判断のポイントは、(1)義務性、(2)業務性、(3)指揮命令性の3つのすべてを満たすかどうかです。まず業者の会合・懇親会の参加が会社もしくは上司からの命令があるのかどうかです。命令があれば、(1)の義務性はあります。命令があれば、業務として遂行しなければなりません。
 拒否すれば、業務命令違反として懲戒の可能性もでてきます。次ぎに業者の会合・懇親会が商談に関わるものなのかです。会合・懇親会の内容が、特に特定の商談を使用者から指示されず、取引先との懇親を深めるという内容の場合には、(2)の業務性は認められません。また、使用者の指揮命令の下になされたものと評価することは困難です。

 仕事で拘束された時間のどこまでが、労働基準法の『労働時間』として認められるのか。学説や行政解釈は、その範囲を『労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間』と定義付けています。
 労働者が使用者の指揮命令の下に置かれているかどうかの判断は、実質的に参加の強制がある否かにより個別に判断することとなり、実質的に参加の強制に該当すると考えられる場合には、労働時間として取り扱う必要があります。営業社員が取引先を接待する場合、上司から取引先を接待するよう指示されているのであれば、接待を行うこと自体が使用者の指揮命令に基づくものなので、接待に要する時間は労働基準法の労働時間に該当すると考えられます。単に親睦目的の接待であるとしても、上司からの命令で業務遂行性があると認められれば労働時間とされます。どちらかといえば、接待自体が上司等の指示であることが多いのではないかと思いますので、時間外手当が問題となる可能性を秘めていると考えられます

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